「機動武将まじかる☆呂布リン!」
第9話 『けいりゃくはにがてなの(仮)』Aパート
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シーン1 呂布の自室
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(カレンダーの日付と曜日アップ。今日が日曜である事がわかる)
(呂布のベッド枕元の時計は午前中を指している)
(部屋には掃除機のモーター音がする)
(呂布が鼻歌を唄いながら自室に掃除機をかけている)
呂布:おっそうじ おそうじ〜
(呂布はエプロンを身に着けている)
(呂布の機嫌は悪くはなさそうである)
(そんな呂布の様子を見ている赤兎)
(対照的に赤兎はバツの悪そうな顔つき)
赤兎:・・・
呂布:えーと、つぎは・・・っと
(呂布は部屋を見渡す)
(赤兎の居る方を向く)
呂布:あ、そうだ! ねぇ赤兎ちゃん
(赤兎はうろたえたように返事)
赤兎:えっと、な 何かしら
(呂布は普通に話しかける)
呂布:ちょっとカーペットめくってくれない?
赤兎:あ、うん
(赤兎はカーペットをめくり、呂布その部分に掃除機をかける)
(呂布は掃除機を動かしながら喋る)
呂布:赤兎ちゃん、ありがとね たすかるわ
赤兎:・・・
呂布:こういうところも、ちゃんとおそうじしなくちゃね
(呂布は掃除機を手際よく動かしている)
呂布:赤兎ちゃん、もうカーペットもどしてもいいわよ?
赤兎:うん・・・
(冴えない表情で呂布を見る赤兎)
赤兎:(あれからほーちゃん、あたしの事何も聞かなくなったけど・・・)
赤兎:あの、ほーちゃん
呂布:ん なに?
赤兎:・・・
(呂布は一旦掃除機のスイッチを切る)
呂布:ん?
(呂布、可愛らしく小首を傾げる)
赤兎:あの、あたし・・・
(赤兎、口開いて何か言おうとするが、やめる)
赤兎:あの その な、何でもないの ごめんなさい
呂布:そお?
(呂布は再び掃除機のスイッチを入れる)
呂布:おっそうじ おそうじ〜
赤兎:・・・
(楽しそうに掃除を続ける呂布)
(赤兎、辛そうにその姿を見ている)
赤兎:・・・
赤兎:ほーちゃん
呂布:ん?
赤兎:あの あたし、ちょっと散歩に行ってくるわね
呂布:うん、わかった くるまにはきをつけてね
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シーン3 董卓の屋敷
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(相変わらず薄暗い部屋)
(董卓が椅子にふんぞり返る様に座っている)
(その隣りには李儒が控えている)
(董卓の前に人影が一つ。何者かが跪いている。しかし顔は暗くて判らない)
(董卓、李儒に意見を求める)
董卓:ふむ しかし警戒するに値する程の者とも思えんが?
李儒:では今しばらくの間だけ注意し、何もなければそのまま放っておく・・・
というのは如何ですか
董卓:そうしておくか
(董卓、人影に向き直す)
董卓:聞いた通りだ そのようにしろ
(頭を下げる人影。そのまま立ち上がり後ろを向いて出て行く)
(扉が開き、そして閉まる)
董卓:あやつも忙しい奴じゃの 何と言うか、こう、惜しいな
李儒:(またか・・・)
董卓:もう少し時間があれば、余が愛でてやろうと言うのに
(董卓、顎に手を当ててしみじみと語る)
董卓:まあ、あやつにはもう少しだけ寂しい思いをさせてしまう事になるが、
これ仕方あるまい その間に余は呂布を愛でるとして・・・む、待て
(董卓、名案が思い付いたかのように手を打つ)
董卓:そうだ! 呂布とあやつも同時に愛でれば公平で不服もあるまい!
李儒:(困ったお方だ)
(李儒、呆れ顔。しかし止めには入る)
李儒:殿、そのお話はいずれ別の機会に
董卓:二人同時か うーむ・・・
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シーン4 呂布の家の屋根(その1)
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(赤兎が屋根の上に座っている)
(赤兎は苦悩の表情)
赤兎:どうしよう・・・あたし
(赤兎は時折溜め息をついたりしている)
赤兎:ほーちゃんを巻き込んだのはあたしだし、そもそもの原因は・・・
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シーン5 近所の公園(その1)
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(公園内の林の中に陳宮がいる)
陳宮:さてと、今度は呂布さんの『お友達』に話をつけないといけませんね
(陳宮、ポケットからテープレコーダーを取り出す)
(陳宮、音量を最大にした後、再生ボタンを押す)
(スピーカーからは何も音がしない)
(しかしレコーダー内のテープは動いており、機械自体は正常に作動中)
(陳宮、機械の動作を確認)
陳宮:いいみたいですね あの時、董卓の屋敷で録音しておいて良かったです
(陳宮、何も聞こえないレコーダーを地面に置く)
陳宮:これで来てくれるはずなんですが
(よく見るとレコーダーの側に白い紙が折りたたまれて置いてある)
(紙の表面には『赤兎馬殿宛』と書いてある)
陳宮:さてと、今度はあちらの支度をしないといけませんね
(陳宮、再生中のレコーダーを置いたまま立ち去る)
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シーン6 呂布の家の屋根(その2)
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(突如、赤兎が頭を上げる)
赤兎:え!? この音って・・・
(赤兎は耳をそば立てて音を捉える)
赤兎:呼び笛?
(赤兎、屋根から呂布の姿を探す)
赤兎:ほーちゃんは家にいるはずなのに
(赤兎が首を庭へ向ける)
(呂布は洗濯籠を持って姉と一緒に自宅の庭にいる)
赤兎:あ、あれ? ほーちゃん?
呂布:おっせんたく おせんたく〜
(呂布は鼻歌を歌いつつ、今は物干し竿に濡れた衣服を掛けている)
(呂布、干す前にシワにならない様に洗濯物を引っ張る)
呂布:あ、あれれ?
(呂布が引っ張った服は縫い目がほつれてしまう)
呂布の姉:あらあら、ほーちゃんまた失敗しちゃった?
呂布:うん・・・ごめんなさい
呂布の姉:うーん、ほーちゃんは力の加減がちょっとだけ、苦手みたいね
呂布:どうしてかなぁ わたし、ちからをいれすぎちゃうのかなあ?
(赤兎はその様子見て苦笑する)
赤兎:それはほーちゃんの武力のせいだと思うんだけど・・・
赤兎:それにしても変ね
(赤兎、今度は首をかしげる)
赤兎:音はまだ聞こえてるけど、ほーちゃんは笛を吹いてないし
(赤兎、しばらく考える)
赤兎:どうしよう 確かめるには行ってみるしかないかしら
(赤兎、呂布を見る)
赤兎:ほーちゃんは・・・巻き込まない方が・・・いいわね
(赤兎、耳を澄ます)
赤兎:こっちの方から音がしてる
赤兎:取り敢えず、音のする方向に行ってみましょ!
(赤兎、屋根を蹴り公園の方向へ飛び跳ねて行く)
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シーン7 近所の公園(その2)
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(公園にやってくる赤兎)
(入り口で耳を立てる)
赤兎:だんだん近くなってきたわ どこ?
(赤兎は耳を動かす)
赤兎:こっちかしら?
(赤兎は林の中へ入っていく)
赤兎:間違いないわ この近くね
(林の中を歩く赤兎、やがて先程陳宮が用意したテープレコーダーを発見)
赤兎:これが音の正体だったのね
(赤兎、前足で停止ボタンを押す)
赤兎:やれやれ、まんまと騙されたってことかしら・・・あら?
(赤兎は手紙に気づく)
赤兎:これは手紙?
(赤兎、手紙を開いて読み始める)
赤兎:えーと何々?
(手紙のアップ。内容は以下の通り)
『突然の無礼な手紙をお許し願います。
唐突ですが貴馬との交渉を望みます。
時間は本日の午後、場所は貴馬がご存知の裏山、
目印は頂上にある木の下とします。
なお、貴馬一頭のみで参加される事をお薦めします。
この交渉の機会を逃さぬ様、貴馬の賢明な判断に期待します。』
赤兎:これは罠かしら?
(赤兎、首を傾げる)
赤兎:間違いなく罠でしょうけど・・・折角のお誘いを断るのも悪いわね
赤兎:一体誰が出てくるのやら
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シーン8 裏山(その1)
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(裏山のある一本の木の前で陳宮が何か作業をしている)
(陳宮の傍には大きなリュックが置いてある)
(陳宮、木の前で立ち止まりあちこち見回す)
(木の周囲は薮や低木に囲まれている)
陳宮:えーと、こっちはこの辺りに伏せておいた方がいいですね
(陳宮、リュックから次々とスピーカー、マイク等の音響機材を取り出す)
(それらの機材を地面や木の陰等、あちこちに隠すように仕掛けて行く)
(陳宮、各々の装置のスイッチを調べたり配線などを確認したりする)
陳宮:よし 大丈夫そうですね
(陳宮、今度は手元の機械に向かって声を出す)
陳宮:あー、あー
(陳宮の声がまったく異なった声色に変わる)
陳宮:変声機も問題なし
(陳宮、腕時計を見て、それから西の空を見る)
陳宮:そろそろ、ですね どうにか間に合いました
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シーン9 裏山(その2)
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(太陽が傾きかけている)
(裏山を走る赤兎)
(赤兎、空を見る。太陽が中天を少し過ぎている)
赤兎:ちょっと指定の時間より早いかな? でも、先に言って相手を待ち伏せ
るのは定石だし
(そのまま走る赤兎)
赤兎:さてと、一体どんな罠が張られてるのかしらね
(駆ける赤兎の前方に一本の高い木が段々と見えてくる)
赤兎:あっ、見えてきた
(赤兎の視線の先には枝に巻き付けられた赤い布が風になびいている)
(赤兎、木の下まで素早く走り、立ち止まる)
赤兎:・・・
(赤兎の周囲でガサガサと音がする)
赤兎:・・・誰かいるの!?
(変声機で声を変えた陳宮)
陳宮:よくいらして下さいました 感謝します
赤兎:誰!?
陳宮:敵ではありません 今の所は
(赤兎、ぶっきらぼうに返答)
赤兎:今の所ねぇ この後は敵になるって事かしら
陳宮:そちらの出方次第です
赤兎:何かするつもり? やめといたほうが良いわよ
あたしねぇ、脚にはちょっと自身があるんだ
陳宮:存じています
(赤兎、周囲を警戒しながら話す)
赤兎:ふん 回りくどいわね ・・・で要件は何?
陳宮:簡単に言うと、取引の提案です
(赤兎、ちょっとの間考える)
赤兎:取引ね・・・モノによるわ
陳宮:こちらは情報の提供をします
赤兎:で、こっちには何を要求する気かしら?
陳宮:ある行動をして貰います
赤兎:それで、もし、断ったら?
陳宮:そうですね・・・
(陳宮、一呼吸置いて応答)
陳宮:いえ、よしておきます
赤兎:どういう事?
陳宮:そちらが取引に応じてくれると期待しているので、言う必要はないでしょう
赤兎:あんまり期待しない方がいいわよ
陳宮:まあまあ ここまで来て手ぶらで帰る事もないですよ
(赤兎、黙り込んで考える)
赤兎:(どうしようかしら どうにも胡散臭いけど)
赤兎:(こちらに情報が不足しているのも事実だし)
赤兎:(ダメもとで何かあったらすぐに逃げ出せば何とかなるかもね)
(赤兎、すぐに逃げ出せるように脚に力を溜めて返事)
赤兎:いいわ、聞くだけ聞いてあげる
陳宮:賢明な判断に感謝します
赤兎:勘違いしないで 取り敢えず聞くだけよ いい?
陳宮:・・・
赤兎:それで良ければ続けて
陳宮:わかりました どの道、話さないと先へは進みませんね
陳宮:まず話を簡単にする為、一旦これまでの状況の整理を行います
・・・いかがですか?
赤兎:いいわ、続けて
陳宮:まず現在の暗闘というか騒動の根本にあるのは玉璽の争奪戦です
しかし肝心の玉璽が現在は行方不明です この事が事態の収拾を困難に
しています
赤兎:まあね
陳宮:現時点で玉璽を狙う第一勢力として挙げられるのが董卓です
赤兎:第二勢力は?
陳宮:それは後からお話します
赤兎:・・・わかった
陳宮:この騒動は最初、董卓自身が玉璽の力を欲した為に、今まで秘密とされ
て来た玉璽の力が外部に漏洩しました
(赤兎、何故か不敵な笑みを浮かべる)
赤兎:(少しは知っているみたいね)
赤兎:(でもこいつがどの程度の情報を持ってるか試す必要があるわね)
赤兎:恆はどうやって玉璽の事を知ったのかしら?
陳宮:残念ながら不明です それは本人より聞き出すしかありません
赤兎:(何だ、大した事ないのね)
赤兎:しかし玉璽の力の隠密性から考えると・・・そうですね、第三者から聞
いたのではなく、直接何らかの形で玉璽の力を目の当たりにしたのでは
ないでしょうか
(赤兎、緊張の為額から汗が一筋流れる)
赤兎:(う・・・)
陳宮:どうかしましたか?
赤兎:何でもないわ
陳宮:では他の勢力が玉璽の力の存在をどうやって知ったのか? という点で
すが董卓周辺の人物から情報が漏れたと考えるのが妥当でしょう
あそこには李儒を始めとして董卓の知る秘密に近づける人物が何人かい
ますから、おそらくその辺りの何者かが、他勢力に買収されたか、ある
いは何らかの裏取引の交渉材料にしたのでしょう
赤兎:・・・
陳宮:貴殿の世界で一時的に董卓は危機に陥りました それは一旦手に入れ
た玉璽を失ったからです
玉璽を失った原因は・・・いえ、今はやめておきましょう
(赤兎は懸命に声の主を探すが、陳宮は巧妙に仕掛を隠しており見つからない)
陳宮:とにかく、恆が玉璽を失った直後に玉璽は異世界、つまりはこちらの
世界への通路を開きました そして玉璽もこちらの世界へ・・・
(赤兎、若干顔が青ざめる)
赤兎:・・・
陳宮:そして玉璽を追い求めて様々な勢力がこの世界にやって来ました
名目上は恆征伐ですが、本当の狙いは玉璽です
反董卓側が一枚岩ではない、というのはこういう訳です 残念ながら
陳宮:結果的にある世界での騒動が別の世界に飛び火したという事です
(赤兎、表情が曇る)
陳宮:(かなりきつい言い方をしてしまいましたね・・・)
(陳宮、話を一旦区切る)
陳宮:ここまでは合ってますか?
赤兎:間違っては、いないわ
(赤兎、声は平静だが、やはり顔色がすぐれない)
陳宮:さて、ここからが私が提供する情報です
すなわち現状の話です ある軍閥を例にとります
陳宮:表向きは恆征伐が第一目標とされました
しかし実情は玉璽を捜す他勢力の脅威を取り除き、その後改めて玉璽を
捜索する、という方針でした
陳宮:当初の予定では恆と他の軍閥を争わせ、両者が弱体化した所をまとめ
て始末するつもりでした
陳宮:ただ、ある特殊な事態が発生しました
赤兎:それは?
陳宮:貴殿の今の主が登場した事です 呂布奉先の武力は非常に強力でした
陳宮:そこで、その軍閥は一計を案じました 呂布奉先を恆にぶつけ、恆
側勢力を削ろうと目論んだのです
赤兎:ほーちゃんを利用する気だったの!?
陳宮:はい そしてあわよくば、その力を恆意外の他の軍閥にもぶつけよう
とすらしています
陳宮:実際にごく最近まで董卓の手の者は、その軍閥の者により呂布奉先とぶ
つかるように誘導されて来ました
赤兎:なんでそんな必要がある訳?
陳宮:使える物は何でも使うつもりなのです そして義勇軍内部の権力闘争、
或いは義勇軍解散後を念頭に置き、力の温存を計ったのでしょう
陳宮:幸いな事に今はまだ、全体情勢で呂布さんの力はそれほど注目を集めて
いません
陳宮:しかしいずれはその力を知るにつれ、利用しようとするよりも、将来的
な脅威と認識する勢力が出てくるかもおかしくありません
脅威とみなされた場合は、今後どうなるか・・・
陳宮:以上が、私の持つ情報です 今後の行動の参考になると思います
赤兎:ふぅん・・・そっちの要求は何よ?
陳宮:騒動が一段落するまで主ともども干渉する事を控えて下さい
赤兎:『何もするな』って事? 話が見えないわね
陳宮:現段階であなたの主が潰えるのは少なくとも貴殿にとって得策ではありません
赤兎:・・・
陳宮:余り目立ち過ぎると、完全に脅威とみなされる危険があります それも
同時に複数の勢力からです
赤兎:仮にそうしたとしてあんたは何の得をするっていうの?
陳宮:残念ですが、それは今回の取引の範囲外です お答え致しかねます
赤兎:ふん、勿体ぶるのね
陳宮:・・・
赤兎:まあ、いいわ 聞くだけは聞いたから そっから先はあたしの好きにさ
せもらうわ
陳宮:それでいいと思ってるんですか?
赤兎:・・・何よ?
陳宮:今の状況は、そんなに楽観できないという事を理解しているんですか?
(陳宮、珍しく強い口調でまくし立てる)
陳宮:あなたが過去を隠した事により、呂布さんは今、酷く傷ついています
陳宮:呂布さんを巻き込んでしまった事を申し訳なく思うなら、あなたの過去
を打ち明けるべきです
(赤兎、黙ってうつむく)
赤兎:・・・
(陳宮の言葉に徐々に熱がこもってくる)
陳宮:このままではお互いにすれ違い、あらぬ誤解を招きます
陳宮:そんなギクシャクした関係のままでいいなんて事はありません!
陳宮:もし、今のような状況で董卓を始めとする、玉璽を狙う者達に本格的に
狙われ始めたら、呂布さんは、あなた達は今のままではいられなくなり
ます!
陳宮:いいですか、呂布さんを巻き込んでしまったと思うなら、最期まで呂布
さんを守って下さい!
陳宮:そして呂布さんを泣かせるような真似はしないで下さい!
陳宮:・・・それに、
陳宮:それに、あなたが過去、何をしたとしても・・・
呂布さんならきっと解ってくれます・・・!
(陳宮、自分が何を言ってるか気がつき、我に返る)
陳宮:あ・・・失礼しました
赤兎:ううん、いいの わかったわ ちゃんと検討してみる
陳宮:ありがとうございます 賢明な判断に期待してます
赤兎:ところで、あんた一体何者?
陳宮:最初に言いました 『今の所敵ではありません』 それだけです
赤兎:・・・ま、敵じゃなさそうね・・・今は
陳宮:ではこれにて失礼します・・・
(物音一つしなくなる)
(赤兎は周囲を警戒するが何も気配はない)
赤兎:消えたみたいね
赤兎:あたしもほーちゃんとキチンと話、しなきゃ!
(赤兎、脱兎のごとく走り去る)
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シーン10 呂布の自室
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(夕日の光が部屋の窓から中に斜めに射している)
(窓は開いていて時折風がカーテンをなびかせる)
(呂布、学習机に向かって何か本を読んでいる)
(絵柄からすると少女漫画のようだ。本の厚さから恐らく月刊誌と予想される)
(呂布は何故か赤くなりながら、真顔で読み耽っている)
呂布:・・・
(呂布、ページをめくる)
(呂布の目がページに釘付けになる)
呂布:わぁ・・・
(呂布、自分の右手で何かを握るような仕種をしてみる)
呂布:こんなかんじ、かな・・・?
(一心不乱に読みふける呂布)
(本を読みながら時々口を大きく開けてみたり、舌で出して舐めるような動作
をしたり、大腿部をモジモジと擦りあわせるような動きをしている)
呂布:・・・
(そんな所へ赤兎が部屋に入ってくる)
赤兎:ほーちゃん、ちょっといい?
呂布:ひゃんっ!?
(赤兎、首を傾げる)
赤兎:ど、どーしたの そんな大声出して
呂布:せ 赤兎ちゃん!?
赤兎:なんか読んでたの?
呂布:その べ べつに なな なんでもないの ほんと
赤兎:何か顔が赤いみたいだけど・・・?
呂布:え!? あ、えっと、このおへや、ちょっとあついかなー なんて
(呂布は素早く大き目のひきだしに少女漫画らしき物をしまう)
(その表紙には『愛を探求する』『オトナの恋』『一歩進んだ心の冒険』等の
アオリ文句が並んでいる)
呂布:あは あはは
赤兎:大丈夫?
呂布:う うん だいじょうぶ!
(呂布、座っている椅子を回転させて赤兎の方を向く)
呂布:それで、どうしたの?
赤兎:あの、ほーちゃん あたし、ほーちゃんにまだ話してない事があるの
呂布:赤兎ちゃん・・・
(呂布、ゆっくりと首を左右に振る)
呂布:いいの 赤兎ちゃんもいいたくないことだってあるだろうから、わたし
もむりにきかないことにしたの
赤兎:ううん お願い ほーちゃんに聞いて欲しいの
呂布:でも、赤兎ちゃん、いいたくないんでしょ? それなのに
赤兎:大丈夫 あたしは大丈夫 だから、ね、聞いて
(呂布はじっと赤兎の目を見る。赤兎も見返す)
(前回のような心の乱れの色は両者の瞳はない)
呂布:・・・わかった わたし、きく
赤兎:ありがとう
(赤兎、一旦深呼吸して、口を開く)
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アイキャッチ
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NEXT