「機動武将まじかる☆呂布リン!」
          第9話 『けいりゃくはにがてなの(仮)』Bパート
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          シーン1 赤兎の回想
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          (向こうの世界にいた時の赤兎が出てくる)
          (それを赤兎がナレーションしていく)

          赤兎:あたしね、実は昔、董卓の所にいたの・・・
          呂布:そう、だったの
          (呂布はやはりショックを隠しきれない)

          赤兎:どうしてあたしが董卓の所にいたのかは覚えてない
             でも物心ついた時は、もう董卓の軍勢の中にいたの

          赤兎:あたしは毎日、董卓やその手下の言われるままに過ごしてきたわ
             合戦へ出た事も何回もあったわ
             董卓達はいつも『奴等は賊軍だ 容赦するな』って言ってたの


          (赤兎、悔やしそうに呟く)
          赤兎:でもある日、あたしは董卓に今まで騙されていた事を知ったの
             董卓の酷い行いをしてる事 あたしはそれの手伝ってしまっていた事

          赤兎:結局、董卓にあたしの脚力を利用されてたの・・・

          赤兎:あたしは、その時『董卓の所を出よう』って決めた そして思い出した
             事があったの
             以前に董卓が『これさえあれば天下を取れる』って言いいながら大事そ
             うに持ってた物があった事を

          呂布:もしかして、それって ぎょくじ?
          赤兎:そう

          赤兎:玉璽を探して見つけたんだけど、そこには戟も置いてあったの
          呂布:げき・・・? これ?
          (呂布はポケットから小さくなった戟を取り出す)

          赤兎:そう その戟の事は『玉璽に反応する特別な戟』って事は知ってたの
             そこであたしは両方を奪って逃げ出した
             その時は『これで董卓をやっつける事ができる』ってそう思い込んでいたの
          呂布:それから?

          赤兎:すぐに追手が沢山やって来た 董卓も追ってきた
             ・・・そしてあたしは外に出る前に城の中の井戸まで追いつめられた

          赤兎:逃げ場が無くなったあたしは『ここから逃げたい』って強く思ったの
             その時、玉璽が一瞬光ったの 驚いたわ 
             そうしたら次は井戸の底が七色に輝き始めて・・・
             今思えば、あれが通路が開いたっていう合図だったと思う

          赤兎:驚いたあたしはその様子に気を取られていたの でも董卓はその隙を見
             逃さなかった 董卓はあたしに向けて矢を放ったわ

          呂布:赤兎ちゃん、だいじょうぶだったの!?
          赤兎:うん 矢はあたしには当たらなかった でもね、玉璽に当たったの
             その衝撃で玉璽は跳ね飛ばされ井戸に落ちてしまった

          赤兎:とっさに跳躍して取り戻そうとしたわ 一旦は玉璽を取ったんだけど、跳んだ時にバランスを崩したせいでそのまま井戸に飛び込んでしまったの・・・

          赤兎:・・・そして気がつくとあたしは裏山に放り出されたてた
             落ちる時に持っていた筈の玉璽も何時の間にかなくしてて・・・

          赤兎:今度は落ちながら戟が光ったの この戟は強い武力の人間に反応するか
             ら・・・
          呂布:あっ! あのとき、あかい流れぼしがみえたけど、もしかして
          赤兎:そう 戟の光だったの
          赤兎:戟が光った時、あたしは裏山をに向かって走る人影を見たの
             走っていたのは ほーちゃん、あなただったの


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          シーン2 呂布の自室(その1)
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          呂布:それにしても、そういうことがあったなんて
          赤兎:あたしの事、嫌いになった?
          呂布:ううん ちがうの! ちょっとびっくりしちゃっただけ

          赤兎:あたしが落ちる前に玉璽をしっかり持っていればこんな事にはならなか
             ったのに

          赤兎:あたしがほーちゃんを巻き込んだの

          赤兎:ごめんね、ほーちゃん あたし・・・あたし・・・
          呂布:そんな! 赤兎ちゃん!
          赤兎:あたしがこっちの世界を巻き込む原因を作っておいて、その上ほーちゃ
             んにまで玉璽を探すの手伝って貰って、董卓の所で危ない目に合わせた
             りして・・・ごめんね ほんとにごめんね

          (呂布がすごい剣幕で制す)
          呂布:そんなことない! あやまらないで!

          (呂布は表情をゆるめて静かに語る)
          呂布:わたし 赤兎ちゃんにあえて『よかった』っておもってるの
             すっごくたいじなおともだちだとおもってるよ
          赤兎:え・・・?
          呂布:もし、赤兎ちゃんがこのせかいにこなかったら わたし、ずっと赤兎ち
             ゃんとあえないままだったのよ?
          赤兎:・・・
          呂布:わたし、そんなのやだな
          赤兎:ほーちゃん・・・

          (赤兎、じわりと涙ぐむ)
          赤兎:ほーちゃん ごめんね 黙ってて

          (呂布は優しく微笑む)
          呂布:そんな、なかないで ね?
          赤兎:わかったわ・・・・ぐすん

          呂布:そっかー あ! そういえば・・・
          赤兎:どうしたの?
          呂布:うん、ちょっとおもいだしたことがあるの
          呂布:わたし、この前、帰り道でこうげきされたの
          (赤兎、緊張する)
          赤兎:まさか、また恆の手下!?

          (呂布、両手を前に出し、首を大きく左右に振って否定)
          呂布:ううん、ちがうの その子たちはね、『ぎゆうぐん』っていってた
          赤兎:義勇軍?
          呂布:うん たしか『恆をせいばいしにきた』って
             赤兎ちゃん、これってどういうことかな?

          (赤兎、陳宮との話を思い出す)
          赤兎:(あいつ、この事も知ってたのかしら・・・?)

          赤兎:・・・それは私達の他にも恆と敵対関係にある勢力があるって事なの
          呂布:ふぇ?
          赤兎:恆が玉璽を狙ってるというのはほーちゃんも知ってるわね?
          呂布:うん しってる
          赤兎:その董卓をやっつけようとしてる・・・と思う
          呂布:じゃあ、わたしたちのみかた?
          赤兎:そうとも限らないのよ 実際には他にも玉璽を狙っている奴がいる、らしいの

          呂布:えっ?
          (呂布、首を傾げる)
          呂布:それって董卓に玉璽をつかわせないようにするため・・・じゃないの?
          赤兎:それもあるかも知れない でも、自分で使いたいと考える奴もいるみたいなの

          (呂布は額に指を当て、考える仕種をする)
          呂布:うーん? どういうこと?
          赤兎:簡単に言うと、色んな勢力が『自分の所が得をするように考えてる』って事
          呂布:えー!? それじゃあ董卓とあんまりかわらないよお!
          赤兎:そうなの そういう可能性があるの

          (呂布、腕を組む)
          呂布:こまったねえ・・・
          赤兎:うーん、そうね でも一つ、方法があるの
          呂布:なに?
          赤兎:あたし達が、一番最初に玉璽を見つけて確保しておくの・・・でも
          呂布:でも?

          赤兎:ほーちゃんが、今まで以上に、あたし達の玉璽争奪戦に巻き込まれる事になるの
          呂布:・・・
          赤兎:そうするとね、ほーちゃんが、もっと危ない目に遭うかも知れないの
          呂布:わたしは・・・
          赤兎:この間も董卓に狙われたし・・・これ以上は・・・ダメよ

          呂布:まって!
          赤兎:え?
          呂布:わたし、やる ぎょくじ、さがす!
          赤兎:駄目よ! ほーちゃんは、もういいの!

          (呂布、椅子から立ち上がる)
          呂布:ううん、よくない!
             だって、いまここで、さがすのやめちゃったら赤兎ちゃん
             なんのためにこのせかいにきたのか、わかんないもん!

          (赤兎、黙って聞く)
          赤兎:・・・
          呂布:それに、このままぎょくじをほかのだれかにとられちゃったら
             赤兎ちゃんのせかいだって董卓のころとかわんないかもしれないんだよっ!?

          呂布:赤兎ちゃん、わたしやる! わたしがみつける!
             もし赤兎ちゃんがだめっていっても、やっちゃうよ!

          (一気にまくし立てたせいで息が切れる呂布)
          (赤兎、呂布が落ち着くのを待ってようやく口を開く)

          赤兎:ほーちゃん 本当にいいの? 今まで以上に大変な目に遭うかもしれないのよ?
          呂布:へいき それにいままでだって もうじゅうぶんに、まきこまれてるし
             わたしには、げきもあるし

          呂布:それにね、このままだったら・・・わたしだってすっきりしないもん!
             そんなのいやだもん!

          (赤兎、また涙ぐむ)
          赤兎:ほーちゃん・・・ありがとう
          呂布:ほらぁ、なかないで?
          赤兎:うん 本当にありがとう

          呂布:じゃあ、そういうことで、これからもよろしくね!
          赤兎:うん! こちらこそ!
          (力強く頷き合う呂布と赤兎)


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          シーン3 商店街
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          (陳宮が通りを歩いている。その先には商店街の入り口を示すアーケードがある)
          (陳宮、アーケードを潜り抜け商店街に入っていく)
          (商店街は買い物客で混み合い、人々の喧騒が聞こえる)
          (通りのあちこちに買い物客の人だかりが出来ている)

          陳宮:(さっきから尾行されてるような?)
          (陳宮は混み合っている所を縫うように歩いていく)
          (陳宮、人ごみを掻き分けつつ前進)

          陳宮:(裏山から尾行されてる訳ではなさそうですが、警戒はしておきましょう)
          (陳宮、歩きながら店のウィンドウに映った光景を横目でチラリと見る)
          (ウィンドウにはそれらしい人物は映っていない)

          陳宮:(ふむ、結構手強そうですね)
          陳宮:(おっと『こちらが気づいてた』という事は隠した方が良さそうですね)
          (陳宮は途中の本屋の前で立ち止まる)
          (本屋の前には屋外用本棚に平積みにされた雑誌が置かれている)
          (陳宮、雑誌の表紙も見ずに手に取り、立ち読みをするフリを始める)
          (片手を裏側の表紙にかけ、もう片方の手で表側の表紙からページをめくる)

          陳宮:・・・
          (陳宮、視線を雑誌ではなく、本屋のガラス戸に向けている)
          陳宮:(確実にいますね しばらくここで様子を見ましょう)
          (陳宮、そのまま雑誌を読んでいるフリを続ける)
          (やがて何者かが近づいてくる足音がする)
          陳宮:(来ましたか?)

          (更に近づく足音。音の間隔から小走りだと解る)
          陳宮:(さすがに人目につく所では何も仕掛けては来ないでしょうが・・・)
          (ガラス戸にふいに人影が映る)
          (陳宮はその姿を確認しようとするが人影はそのまま陳宮に飛び掛かってくる)
          (咄嗟に体を捻って対応しようとする陳宮。しかし間に合わない)
          陳宮:(しまった!? 甘く見過ぎていましたか!?)

          (人影、そのまま陳宮に抱きつく)
          張遼:陳宮く〜ん! 奇遇だね〜!
          陳宮:うぁっ!?
          (陳宮、その拍子に雑誌を落とす)

          張遼:(さて、彼から何か情報がひきだせるかな?)
          張遼:何〜? 買い物してたの?
          陳宮:張遼さん!? 何故ここに?
          張遼:私? 私はお買い物よ んふふ

          張遼:(これはどうかしら?)
          (張遼、更に上半身を押し付けるようにする)
          (陳宮の腕に何かが当たる感触がある。呂布よりも大きい)
          陳宮:(うっ これは・・・?)
          (陳宮、顔が赤くなる)
          陳宮:す、すいません! ちょっと離れていただけますか?
          張遼:あっ ゴメンね

          (張遼、陳宮からパッと離れる)
          張遼:陳宮くん? どうかした?
          陳宮:いえ 大丈夫です なんでもありません
          張遼:そお? で、陳宮くんは何してたの?
          陳宮:あ、ちょっと立ち読みです

          (陳宮、道に落ちたはずの雑誌を探す。だが見つからない)
          陳宮:あれ? さっき落としたはずなんですが・・・?
          張遼:これの事でしょ?
          (いつの間にか張遼が雑誌を持ちパラパラとめくっている)
          張遼:へぇ〜 陳宮くん、こういうのに興味があるの?
          陳宮:何ですか?

          (陳宮、脇から張遼が開いているページを見る)
          (張遼、ページをめくって行く)
          (すると所々モザイクがかけられた写真が印刷されたページが次々と現れる)
          張遼:そっかぁ 陳宮くんもこんな事考えたりするんだ・・・
          張遼:もぉ〜 えっちなんだから!
          (張遼、顔を俯きかげんにし、少し頬を染めて上目遣いで陳宮を見る)

          (陳宮、うろたえる)
          陳宮:いえ、僕は、その、決して、そんな!
          陳宮:(なるほど・・・そういう事でしたか)

          張遼:ううん、いいのよ あ、でもね
             ・・・そういう陳宮くんも・・・キライじゃないよ?
          (陳宮、更にうろたえる)
          陳宮:ご ごご誤解です 本当に!
          張遼:(ふふ、動揺してる 案外簡単ね)
          陳宮:そそ それより買い物はいいんですか!?
          張遼:私? 私の方はもう済んだわ 君はどうなの?
          陳宮:僕はそろそろ帰る所です
          張遼:じゃあ途中まで一緒に帰ろ ね?

          (陳宮、小さく呟く)
          陳宮:うーん また何か面倒な事にならなければいいのですが
          張遼:え? 何?
          陳宮:何でもありません ・・・行きますか
          張遼:そう来なくっちゃ

          (張遼、本棚に雑誌を戻す。陳宮と張遼、二人一緒に並んで歩いて去ってく)

          (さっきまで陳宮達がいた本屋にカメラが振られる。そのまま屋外用の書棚をズーム)
          (書棚の一番上に一冊の雑誌が置かれている。それは先程張遼が持っていたエロ雑誌)
          (そしてエロ雑誌の下にはもう一冊、ウラ表紙の耳が折られた普通の雑誌がある)


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          シーン4 商店街出口
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          (何か会話しながら横に並んで歩いている陳宮・張遼)
          (陳宮張遼は表面上は笑顔で会話している)

          張遼:それで私、まだこの辺りの事よく知らないし、どうしようかなって思っ
             てたの そうしたら陳宮くんが本屋さんにいるのが見えたから、思わず
             嬉しくなっちゃって
          陳宮:ああ、それで抱きついて来たんですね
          張遼:うん
          陳宮:さっきのアレは驚きましたよ?
          張遼:あははっ ごめんねっ

          張遼:(手強いわね なかなかボロを出さないし、ちょっと色々試してみよう)
          (張遼、横を歩いている陳宮との距離を徐々に狭めて行く)
          (歩きながら陳宮の腕に自分の腕を絡めてくる張遼)

          (困惑する陳宮)
          陳宮:な 何ですか、一体?

          張遼:ちょっと腕を組んでみたくなったの
          (上機嫌な張遼)
          張遼:(さて、どう反応するかしら?)
          陳宮:離れた方がいいですよ

          (張遼、不満気に言う)
          張遼:えー なんでぇ?
          陳宮:こんな所、誰かに見られたらが誤解されますよ?
          張遼:それだったら・・・

          (張遼、上目使いで陳宮を見る)
          張遼:私、陳宮くんが相手なら誤解されても・・・いいよ?
          陳宮:何を言ってるんですか

          張遼:(あまり変化がないわ もう少し、揺さぶってみようかしら)
          (張遼、陳宮から離れ、再び横に並ぶ)

          (張遼、陳宮に甘えるような声で問い掛ける)
          張遼:ねぇ、陳宮くん ちょっと聞いていい?
          陳宮:何でしょうか

          (張遼、今度は陳宮の正面、3歩ほど前方に回り込み、後ろ向きに歩く)
          張遼:陳宮くんは 私の事、どう思ってるの?

          (陳宮、顎に手を当てちょっと考えてから答える)
          陳宮:なかなか難しい質問ですね
          張遼:だって、陳宮くん、学校だと殆ど私に話し掛けてくれないし・・・

          (張遼、腰の後ろで手を組んで拗ねたポーズを取ってみる)
          張遼:陳宮くんは私の事、キライなのかなぁって思って
          陳宮:別に嫌っている訳ではありませんが・・・それよりも
          張遼:何?
          陳宮:後ろ向きで歩くのは危ないですよ
          張遼:だいじょーぶ、だいじょーぶ それで?
          陳宮:いえ、それだけです

          (張遼、口を尖らせ、頭の後ろで両手を組む)
          張遼:ちぇー つまんないなぁ

          陳宮:すいませんね
          (陳宮、苦笑い そして、一瞬、鋭い目付きをして小さく呟く)
          陳宮:そちらが手の内を明かしてくれないのでこちらも明かす訳にはいきませんから

          張遼:何か言った?
          陳宮:いえ別に

          陳宮:そろそろ普通に歩きませんか?
          張遼:えー 私、この方いいな 陳宮くんとお話しながら歩けるし

          (陳宮達、商店街を抜け、交差点に差し掛かる)
          (歩行者用信号は赤。車道は車が往来している)
          (張遼、信号に気づかず後ろ向きのまま横断歩道を渡ろうとする)

          張遼:学校でもこうやって歩けばもうちょっと陳宮くんと・・・

          (何かに気づく陳宮)
          陳宮:張遼さん! 危ない!
          張遼:えっ

          (車道を自動車が走ってくる。張遼、気づくのに遅れる)
          (同時に甲高いブレーキ音が鳴り響く。張遼、音の方を向く)
          張遼:!
          (張遼に車が迫る。張遼の顔が恐怖に染まり、冷や汗が流れる)


          (張遼が車に轢かれる寸前、誰かの手が伸び、張遼の腕を掴む)
          (そして間髪入れず歩道の方へ張遼を引っ張り込む)
          (その直後、一瞬前に張遼がいた場所を通りぬける車)

          (張遼を引っ張ったのは陳宮だった)
          (張遼、引っ張られた勢いで、そのまま陳宮に倒れ込む)
          (陳宮は受けとめきれずに尻餅をついて座り込む)
          (陳宮と張遼、抱き合うような形になる)
          陳宮:・・・
          張遼:・・・

          車の運転手:バカヤロー!死にてえのか!
          (車は走り去る)

          張遼:あ・・・あの
          (張遼、陳宮の顔を間近で見る)
          陳宮:大丈夫ですか?

          (張遼、ドキリとする)
          張遼:う うん

          陳宮:良かった・・・ふぅ〜
          (陳宮、掴んでいた手を放して冷や汗を拭う)

          (陳宮、険しい表情で張遼を見る)
          陳宮:気をつけなきゃダメじゃないですか!!

          (怒鳴られた張遼、一瞬ビクリとする)
          張遼:は、はい ごめんなさい・・・
          張遼:(ヤダ、私、何ドキドキしてるのよ)

          (陳宮は表情を和らげ、張遼をいたわるように問い掛ける)
          陳宮:立てますか?
          張遼:え? ええ・・・あら?

          (張遼、膝に力を力を込めて立とうとする)
          (だが、力が入らない)

          張遼:へ、変ね? んっ! んんっ!

          (数回試すが、やはり力が入らない)
          張遼:ご、ごめん 何か、びっくりして腰が抜けちゃったみたいで・・・
          陳宮:そうですか・・・わかりました、ちょっと失礼します!

          (陳宮、張遼の背中に両手を回しを丸太を抱える様にする)
          (陳宮、張遼がずり落ちないように腕に力を込め、すっくと立ち上がる)

          (結果的に陳宮に抱かれる格好になった張遼)
          陳宮:すみません ちょっと、恥ずかしいかも知れませんが、我慢してください
          張遼:あ・・・うん

          張遼:(あ、陳宮くんの胸ってあったかいんだ・・・)
          (何故か張遼の顔に赤味がさす)

          (陳宮、張遼を抱えたまま問い掛ける)
          陳宮:どうですか、まだ立てませんか?

          (張遼、自力で立とうとするがまだ脚に力が入らない)
          張遼:ごめんね、まだちょっと駄目みたい

          陳宮:あそこにベンチがあるから、あそこまで行きましょう
          (陳宮の視線の先にはバス停と黄色いペンキの剥げかけた木製ベンチ)
          張遼:う、うん あの、陳宮くん
          陳宮:何ですか?
          張遼:さっきは、その・・・

          (張遼、俯いて小さく呟く)
          張遼:あ、ありがとう

          陳宮:いえ、無事で何よりです さ、行きましょう
          (陳宮、張遼を抱えベンチまで歩く)
          (おとなしく抱かれている張遼 頬が赤い)
          張遼:・・・

          (陳宮、張遼をベンチに座らせる)
          陳宮:よっ・・・と すみませんね、恥かしかったですか?
          (俯いて答える張遼)
          張遼:だ 大丈夫・・・

          (張遼はチラリと顔をあげ、陳宮を見る)
          陳宮:何か?
          (張遼、慌ててまた下を向く)
          張遼:あ な、何でもない
          陳宮:そうですか ではちょっとお待ち下さい すぐ戻りますから
          張遼:え? うん・・・

          (陳宮、小走りにベンチを離れ何処かへ行く)
          (その陳宮の後ろ姿を見つめる張遼)
          張遼:(どうしたのかしら、私 まだドキドキしてる)
          張遼:(さっきの事故はもう大丈夫なのに・・・)


          (しばらくして戻ってくる陳宮。手にはジュースの缶を二つ持っている)
          張遼:あ 陳宮くん
          陳宮:すみません、お待たせして 勝手に選びましたが、お茶で良かったですか?
          張遼:わざわざ買いに行ってくれたの?
          陳宮:何か飲み物があった方が落ち着くと思いまして どうぞ

          (張遼、両手で缶を受け取る)
          張遼:あ、ありがとう あの、お金払うから
          陳宮:いえ、結構ですよ
          張遼:でも・・・
          陳宮:気にしないで下さい 僕が勝手に買ってきただけですから
          張遼:そんな、やっぱり悪いよ

          (陳宮、ちょっと思案する)
          陳宮:うーん
          (陳宮、微笑んで答える)
          陳宮:じゃあこうしましょう 今度、何か別の機会にお返しして貰うという事にしましょう
          (張遼、それを見て慌てて目を逸らす)
          張遼:・・・わかったわ 陳宮くんがそれでいいなら、そうする

          (張遼の隣に座る陳宮)
          陳宮:お隣、失礼します
          張遼:うん

          (陳宮、缶のプルタブに指をかけ開封。片手で缶を持ちゴクゴクと飲み、一息つく)
          陳宮:ぷはぁっ

          (張遼も同様に缶を開ける)
          張遼:陳宮くん それじゃ、いただきます
          陳宮:気にせずどうぞ
          (張遼は両手で缶を支え、可愛らしく小さくコクンコクンと飲む)
          張遼:はぁっ・・・おいし・・・

          (張遼、缶を口から離す)
          (張遼はまだ中身が残っている缶を両手の中がくるくると回す)
          (回転する缶をじっと見つめて黙っている張遼)
          張遼:(私、何やってんだろ 彼の事を探っているのに、助けられるなんて)

          (張遼は陳宮の横顔を見る)
          (陳宮は缶を仰いで、ぼんやりと空を見ている)
          (空は夕焼け。鳥が3羽、飛んで行く)

          (陳宮は空を見ながら考える)
          陳宮:(さっきは思わず張遼さんを助けてしまいましたが・・・董卓の密偵かもしれないんですよね)
          陳宮:(・・・)
          陳宮:(ま、これも何かの縁かも知れませんね それに目の前で事故が起きるのを黙って見ている訳にもいきませんし)

          (しばらくの間、二人とも無言)
          陳宮:・・・
          張遼:・・・

          (頃合を見計らって陳宮が話しかける)
          陳宮:落ち着きましたか?
          張遼:あ うん おかげ様で
          陳宮:立てますか
          張遼:どうかな んっ
          (張遼は膝に力を込める。今度は大丈夫)
          (張遼、ベンチから立ち上がる)
          (張遼、その場で軽く3歩ほど歩いてみる)
          張遼:あ・・・大丈夫、みたい
          陳宮:それは良かったです
          (陳宮も立ち上がる)

          張遼:陳宮くん、その・・・色々ありがと
          陳宮:気にしないで下さい
          張遼:・・・私ね
          陳宮:え?
          張遼:・・・ううん、ごめん 何でもない
          陳宮:そうですか? じゃ、そろそろ行きますか

          (陳宮、道路の方を指差す)
          陳宮:僕はこちらですが、張遼さんは?
          張遼:(今日は、もう、やめにしよう・・・)
          張遼:私は・・・こっち、かな
          (張遼は陳宮と反対側の方向を指差す)

          陳宮:逆ですね じゃあ、今日はこれで
          張遼:あっ 空き缶、私が片付けるから貸して
          陳宮:いいですよ そんな
          張遼:ううん ご馳走になったかた、それ位は私がするわ あ、もちろんまた
             別にお返しもするから

          (陳宮、ちょっと感心する)
          陳宮:(張遼さんは意外と律儀な所があるんですね)
          陳宮:そうですか ではお手数ですがお願いします
          張遼:うんっ
          陳宮:ではまた明日、学校で
          張遼:うん またね バイバイ
          (小さく手を振る張遼)

          (陳宮は軽く会釈をして、去って行く)
          (それを見送る張遼)
          (夕暮れの中で陳宮の姿がだんだんと遠くなる)
          (張遼、陳宮の姿が見えなくなってポツリと呟く)

          張遼:陳宮くん・・・か
          (張遼、胸に陳宮が飲み干した空き缶を抱きしめる)


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          シーン5 呂布の自室(その2)
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          (夜。星空の下、呂布の家)
          (呂布の部屋の窓から灯りが漏れている)

          (呂布、部屋の中央に座り込んで何か作業をしている)
          (その様子を横から見ている赤兎)
          (呂布は何かの布にアイロンをかけている)

          (鼻歌を歌う呂布)
          呂布:あいろん あいろ〜ん
          (呂布、非常に丁寧にアイロンをかけている)
          赤兎:・・・ほーちゃん、それは何?
          呂布:これはハンカチよ

          (一旦、アイロンを脇に置いてハンカチを眺めたり裏返したりする)
          呂布:ちゃんとぜんたいにかかってるかな?
          赤兎:随分丁寧にやってたみたいだけど、何か特別なハンカチなのかしら

          (呂布、頬を染める)
          呂布:うん・・・これ、だいじなハンカチなの
          (呂布の手元には陳宮のハンカチが置いてある)

          (目を閉じて陳宮を思い浮かべる呂布)
          呂布:(陳宮クン・・・)
          (呂布、思わずハンカチを両手で握って胸に抱く)

          赤兎:あっ ほーちゃん! ハンカチ! ハンカチ!
          (呂布、赤兎の声に我に返る)
          呂布:え?
          赤兎:ハンカチ、またシワになっちゃうわよ
          呂布:えっ ああっ あ、あぶないあぶない・・・

          赤兎:大事なハンカチなら気をつけて扱わなきゃ
          呂布:うん そうだね

          (赤兎、時計を見る)
          赤兎:あら ほーちゃん そろそろ寝る時間よ
          (呂布も時計を見る)
          呂布;あ ほんとだ

          (呂布はアイロン等の道具を片付る)
          呂布:おかたづけはこれでよし あとは・・・
          (呂布、机の上に置いてある通学鞄の開ける)
          (呂布はアイロンをかけ終ったハンカチを丁寧にしまう)
          呂布:こっちもこれでよし

          (呂布は鞄を閉めながらふと、窓の外を見る)
          呂布:わあ・・・こんやはよくみえる・・・

          (呂布は窓辺に立つ)
          (外は晴天。星や月が良く見える)

          呂布:きれい・・・
          呂布:(陳宮クンもこのおほしさまをみてるのかな・・・)

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          第9話終了
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