「機動武将まじかる☆呂布リン!」
          第11話 『ちんきゅうクンとだいせっきん!?(仮)』Bパート
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          シーン1 学校(屋上)
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          (校舎に取り付けられた時計は昼休みを指している)

          (頭上には曇りがちな灰色の空が広がる)
          (屋上の周囲は高いフェンスに囲まれている)

          (屋上出入り口の扉のアップ)
          (扉はアルミサッシで窓の部分に鋼線入りのガラスがはめ込まれている)

          (ガラス越しに人のシルエットが映り話し声が聞こえる)
          陳宮の声:それで呂布さんの様子はどうでしたか?
          張遼の声:まだ寝てたわ 今日は放課後まで寝てるんじゃないかしら?
          (扉のノブが回転して内側から開く。現れたのは陳宮と張遼)

          (陳宮、張遼の順番で扉から出てくる)
          (会話しながら出てくる)
          陳宮:そうですか
          張遼:呂布さん、どうしたのかしらね
          陳宮:うーん・・・

          (張遼、屋上へあがると扉を閉める)
          (『バタン』と音がして閉まる)

          (屋上の真ん中辺りまで歩く2人)
          (そこで立ち止まる張遼)
          (張遼の横顔が緊張する)

          張遼:さてと 陳宮くん、ここでならいい?
          (陳宮、立ち止まる)
          (陳宮、周囲を見回して他に誰もいない事を確認する)
          陳宮:・・・そう、ですね
          (屋上は風が強く、雲も早く流れていく)
          張遼:風、出てきたね・・・
          陳宮:ええ
          張遼:・・・

          (張遼、深く息を吸い込み、吐き出す)
          張遼:陳宮くん あ、ありがとう・・・
          陳宮:え?
          (陳宮、ちょっと面食らう)
          陳宮:あの・・・どういう意味ですか

          (張遼、うつむいて頬を少し赤くする)
          張遼:その 私を建設予定跡地から連れ出した後・・・私を介抱してくれて
          陳宮:あ、その事ですか
          張遼:お礼、ちゃんと言ってなかったから・・・
          陳宮:いえ、どういたしまして

          (張遼、不思議そうな顔をして尋ねる)
          張遼:それにしても、何で私を介抱してくれたの?
          陳宮:あれは放置しておいたら症状が悪化すると聞いた事があったので・・・
             以前、別の所で似たような事があったんですよ
          (張遼は何か思い当たるのか表情が若干曇る)
          張遼:そっか・・・

          陳宮:それに張遼さんは本心から恆に従っている訳ではないようだったので、
             この際だから恆のところから連れ出すにはいい機会だと思ったんです
          張遼:え! 本心じゃないってどうして解ったの?
          陳宮:何となく、ですよ
          張遼:嘘でしょ? 本当は?
          陳宮:本当に何となくですよ 強いて言うなら普段の張遼さんの振る舞いから
             判断しました
          張遼:私の? ふーん・・・?
          (張遼は首を傾げが、何か思いつく)


          張遼:あっ そう言えば陳宮くん、私を介抱してくれた時にこう言ったよね?
             『私は陳宮くんに捕虜にされた』って
          陳宮:ええ、確かにそう言いましたが・・・
          張遼:あれってどういう事なの?
          陳宮:あれはですね『張遼さんを僕が捕虜にした』としておけば都合が良いか
             と思ったんです
          (陳宮が一呼吸置くと、張遼は黙って続きを促す)
          陳宮:何らかの事情が張遼さんにあり、張遼さんは自分から恆の所を抜け出
             す事が出来なかった・・・これは僕の勝手な想像ですが
          張遼:・・・
          陳宮:そこで『捕虜になった』としておけば張遼さんは自主的に恆の所を抜
             け出した訳ではなく、やむを得ず降参した という風に出来ます 僕も
             張遼さんを捕らえたという手柄があれば、内部で動きやすくなります
          (陳宮、肩をすくめる)
          陳宮:・・・こういうやり方は余り好きではないのですけどね

          陳宮:いずれにしろは捕虜というのはあくまで便宜上なので自由にしてくれて
             構いません
          (陳宮、穏やかに笑う。対照的に張遼は戸惑っている)
          張遼:自由って、どうして解放してくれるの?
          陳宮:僕達の目標はあくまで打倒董卓であって張遼さんではありません
          張遼:それは・・・本当に?
          陳宮:いいえ 建前ですけど、一応の目標であるという事で
          張遼:私を解放を決めたのは誰?
          陳宮:僕です 僕の判断で決めました

          (張遼、驚く)
          張遼:えっ!? ちょっと、そんな事して大丈夫なの
          陳宮:事後承諾という形で認めさせました
          張遼:よくそんな事が・・・
          陳宮:まあ、色々ありましてね
          張遼:そっか・・・じゃあ結局は全部陳宮くんのお陰だったのね・・・

          (陳宮、今思い出したかのように)
          陳宮:あっ そう言えば一つ、お願いがありました
          張遼:何?
          陳宮:自由と言っても再び恆側につく、なんて事はできれば勘弁して下さい
          張遼:そんな事はしないわ・・・もう二度と董卓なんかには従わない
          陳宮:そうですか・・・

          張遼:あの、陳宮くん
          陳宮:はい?
          (張遼、頬を染めて俯く)
          張遼:あ、ありがとうね・・・ほんとに
          (陳宮、照れくさそうに顔を逸らす)
          陳宮:そ、それで話とはその事だったんですか?
          (張遼、顔を上げる)
          張遼:あ、ううん 違うの それとは別の話があるの あ、もちろんお礼も言
             いたかったんだけど・・・
          (陳宮、張遼に向き直る)
          陳宮:別の話とは?

          (張遼、改まって陳宮を見る)
          張遼:私、あなたに協力をしたいの
          陳宮:協力 ですか?
          張遼:だって私、陳宮くんの敵だったのに助けてもらって・・・だからお返し
             がしたいの
          陳宮:『助けた』だなんて大げさですよ お返しなんて結構です
          張遼:ううん それじゃ私の気がすまないの
          (陳宮は申し訳なさそうに答える)
          陳宮:え、うーん 有り難いんですが・・・気持ちだけで結構ですよ
          張遼:でも・・・

          (陳宮、腕を組んで考え込む)
          陳宮:うーむ・・・では、すいません ちょっといいですか?
          (陳宮は張遼の顔色を伺いながら尋ねる)
          張遼:何? 何?
          (逆に張遼は身を乗り出して陳宮に迫る)
          張遼:ねえ 私、何すればいいの?

          (張遼、頬を染めて恥ずかしそうに言う)
          張遼:陳宮くんの言う事なら、わ 私、何でもするから だから、その・・・
          陳宮:あの、張遼さん?
          (張遼、上の空)
          張遼:あのね、す 少しくらい恥ずかしい事でも、その・・・私、頑張ってす
             るから 屋上には今、私達しかいないし・・・
          陳宮:もしもし?
          張遼:あっ、でも校庭にはまだ他の人とか残ってるかも それでもし、誰かに
             見られたら・・・きゃっ ど、どうしよう?
          (張遼は頬に両手を当て目を閉じ、首を左右に振る)

          陳宮:あの張遼さん、一体何を言ってるんですか・・・?
          (現実に引き戻された張遼、目をしばたかせる)
          張遼:・・・え? 違うの?
          陳宮:董卓について、の事なんですがよろしいですか?
          (張遼は残念そう)
          張遼:え、恆? なーんだ

          張遼:・・・それで何かしら?
          陳宮:答えにくければ別に無理をしてくれなくても結構です
          (陳宮、言いにくそうに続ける)
          陳宮:その、多少の義理もあるかもしれませんし・・・
          (張遼、ゆっくりと首を左右に振る)
          張遼:ううん もう、いいの


          (張遼、晴れた表情で陳宮を見る)
          張遼:さっきも言ったけど、もう私・・・董卓には従わないから
          陳宮:・・・わかりました では董卓が汗をかいた所を見た事はありますか?
          張遼:うーん・・・特に稽古や運動とかしてる所を見た事は・・・
          陳宮:暑い時の汗とかそういうのでもいいんです
          張遼:汗、ねぇ 汗、汗・・・
          (張遼はこめかみに人差し指を当て、首を傾げて何とか思いだそうとする)

          (しばらくそのままの姿勢で固まる張遼)
          張遼:・・・あ
          陳宮:何か思い当たりましたか?
          (今度は陳宮が身を乗り出す)
          張遼:そう言えば一回だけ、変な所を見た・・・ような気がする
          陳宮:それは?
          張遼:以前、屋敷の廊下ですれちがった時、理由は解らないけど董卓が顔に汗
             をかいていた時があったのよ その時、汗が顔で固まったような そん
             な風に見えた事があったの
          陳宮:本当ですか?
          (詰め寄る陳宮)
          (陳宮の顔が間近に迫ったので張遼、少しだけ赤くなる)
          張遼:え、ええ・・・

          張遼:『あれっ?』と思ったんだけどすぐに行っちゃったから確かめてはいな
             いんだけど・・・
          (陳宮、張遼から離れる)
          陳宮:そうですか・・・なるほど
          (陳宮、一人で納得した様子)

          張遼:ねぇ、何でそんなこと気になるの
          陳宮:え、ええ まぁ ちょっと思う所がありまして
          張遼:それにそんな事なら昨日でも教えたのに
          陳宮:昨日は香の件もあって控えさせてもらいました 落ち着いてから訊こう
             と思ってたんです
          張遼:ふーん そうなの・・・?
          陳宮:ありがとうございます
          張遼:そんな、お礼なんて言わないで!
          陳宮:いえ、貴重な情報です お返しには十分すぎます
          (向かい合う陳宮と張遼の間に水滴が一つ、落下)
          張遼:こんなのお返しの内に入らないわ ねえ、もっと何でも言って?
          (屋上に床に小さな濡れ染みを作る)
          陳宮:おや?
          張遼:あら?

          (張遼、上空を見上げながら胸の前に手の平を出す)
          (張遼の手にポツリ、ポツリと雨が降り始める)
          張遼:あ、いけない! 降ってきちゃった!
          陳宮:中に戻りましょう!
          張遼:うん!

          (張遼・陳宮は小走りで屋上出入り口へ向かう)
          (入りながら話をする二人)
          陳宮:今日は降らないと思っていたのですが
          張遼:放課後までに止むといいわね
          陳宮:そうあって欲しいです
          張遼:陳宮くんは今日、帰り遅いんだっけ?
          陳宮:えーと、そうですね 確か掃除当番、あと学級日誌もつけないと
          張遼:あ、そうなの 実は私も今日は委員会があって
          (扉に辿り着く二人)
          (張遼は扉のノブへ手を伸ばしかけるがその手を一旦止める)
          張遼:あら?
          陳宮:何かありましたか?
          張遼:え、うん おかしいな
          (首を傾げる張遼)
          張遼:扉はきちんと閉めたつもりだったのに・・・

          (よくみると扉が少し開いている)
          陳宮:・・・そうですか
          (陳宮、やけに神妙な顔)
          張遼:陳宮くん?
          陳宮:何でもありません 早く中に入りましょう


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          シーン2 学校(昇降口)
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          (外ではまだ雨が降り続いている)
          (時計は針は放課後の時間を指している)
          (昇降口のガラス戸は開放されていて、外からは雨音が聞こえてくる)
          (下駄箱が本棚のようにいくつも並んでおり、生徒の姿はなくがらんとしている)

          (陳宮、下駄箱の前で外を向いて立っている)
          (陳宮は外履きの履いているが、外には出ようとせずに外を見ている)
          (困ったような顔の陳宮)

          陳宮:(参りましたね 今日は降らないと思っていたのですが・・・)

          (校舎の奥の廊下から歩いてくる張遼)
          (張遼は片手に鞄を持ち、反対の手に桃色の傘を持っている)

          (張遼の位置から昇降口に立つ陳宮の後ろ姿が見える)
          (歩いてきた張遼、陳宮に気付いて立ち止まる)

          張遼:(あれ? あそこに居るのは陳宮くん?)
          (陳宮は途方に暮れたように立っている)
          張遼:(どうしたのかしら・・・傘、ないのかな?)

          張遼:(そうだ 陳宮くんを誘ってみよう!)
          (張遼は陳宮に呼びかけようとして口を開く)
          張遼:あの

          (すると不意に下駄箱の陰から呂布の姿が現れる)
          呂布:陳宮クン!
          (陳宮は呂布の方を向く)
          陳宮:呂布さん?
          (呂布は鞄と白い傘を持っている)

          張遼:あ・・・
          (張遼、咄嗟に廊下にある柱の陰へ隠れる)
          張遼:(ヤダ 私、何で隠れるのよ!?)
          (張遼は柱の陰からそっと顔を出し、様子を伺う)

          (呂布、陳宮に近づく。二人とも張遼に見られている事には気付かない)
          陳宮:まだ残っていたんですか? 先ほど保健室へ様子を見に行ったら、もう
             出て行ったと聞いたのですが
          呂布:あ、うん・・・まあ、ね 陳宮クンはどうしてのこってたの?
          陳宮:掃除をしたり学級日誌をつけたりしてたので残ってました
          呂布:もうおわったの?
          陳宮:はい
          呂布:じゃあ いま、かえりなの?
          陳宮:そうです 呂布さんも今帰りですか?
          呂布:うん

          (呂布、陳宮の手を見る)
          呂布:あれ? かさはどうしたの?
          陳宮:今日は降らないと思って持って来なかったんです
          呂布:そうなの・・・じゃあ、いっしょにかえろ? わたしのかさにいれてあ
             げる
          陳宮:いいんですか?

          (呂布、頷きながら傘を開く)
          呂布:いいの
          (呂布は小さな声で続ける)
          呂布:・・・はじめから、陳宮クンをさそってかえるつもりだったし・・・
          陳宮:え?
          呂布:なんでもないの さ、はいって

          (陳宮、ちょっと迷う。だがすぐに返事をする)
          陳宮:・・・ではそうさせて貰います
          呂布:どうぞ
          (傘の中に入る陳宮)
          陳宮:あの、傘は僕が持ちます
          呂布:え、いいよぉ
          陳宮:いえ 入れて貰ってるのは僕ですし 持たせて下さい
          (陳宮、傘の柄に手を伸ばす)
          (柄を持つ呂布の手と陳宮の手が触れる)
          呂布:あっ・・・ そ、それじゃあ、おねがいしちゃおっかな?
          陳宮:はい

          (呂布は柄から手を離し、陳宮が柄を持ち直す)
          陳宮:どうも
          呂布:それじゃ、いこっ
          (並んで歩き出す呂布と陳宮)
          (昇降口の軒下を出ていく)

          (張遼、柱の陰から出てくる)
          張遼:・・・
          (張遼は遠ざかる相合傘を寂しそうに見つめてる)


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          シーン3 通学路
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          (住宅街の道を相合傘で歩いていく呂布と陳宮)
          (道の左右はブロック塀や生垣で仕切られている)
          (道路が交差している辺りは塀で視界が遮られている)

          (相合傘はややゆっくりとしたペースで歩いている)
          (道路には他に人通りもなく、車が走ってくる気配もない)
          (雨が呂布の傘に当たり、水滴が跳ねる音がする)

          (呂布も陳宮も神妙な顔つきで歩いている)
          (二人とも無言)

          (呂布は唐突に手を差し出す)
          (陳宮、呂布の手を見る)
          陳宮:あ・・・
          (呂布の手には陳宮のハンカチが握られている)
          (陳宮の顔が強張る)

          (呂布は歩きながら静かに言う)
          呂布:これ、わすれものだよ 陳宮くんのだよね? はい、どうぞ
          (陳宮、呂布からハンカチを受け取る)
          陳宮:・・・どうも ありがとうございます
          (陳宮は呂布の横顔を見るが、すぐ前を向く)

          呂布:そのはんかちね・・・ひろったの こうじげんばのあとちで
          陳宮:そうです か
          呂布:・・・
          陳宮:・・・

          (またしばらく無言で並んで歩く二人)
          (雨が降る音のみが静かに響く)

          (並んで歩いていた呂布、急に俯いて立ち止まってしまう)
          (陳宮、気付かずに歩いてその場に呂布を置いてきぼりにしてしまう)
          (呂布の身体が傘の下から外れる)
          (陳宮は2歩進んで呂布の事に気付く)
          陳宮:ん?
          (陳宮も立ち止まり後ろを振り返る)

          陳宮:呂布さん?
          呂布・・・
          陳宮:濡れてしまいますよ?
          (陳宮、腕を伸ばして傘を差し出す)
          (呂布の頭上に傘が被さり、今度は陳宮の身体が傘の外になる)
          呂布:陳宮クン
          (呂布、顔を上げる。真剣な目で真っ直ぐ陳宮を見つめている)
          陳宮:・・・なんでしょう
          (陳宮、傘を持つ腕に力が入る)

          (呂布は穏やかな調子で話し出す)
          呂布:わたしね、さっき やっとおもいだしたの
          (呂布、一呼吸置く)
          呂布:董卓のやしきから だれが、たすけてくれたのか
          (傘を差し出した姿勢のまま固まる陳宮)
          陳宮:・・・

          呂布:それから、さっきのこともきいちゃった

          呂布:陳宮クンたちにね ほけんしつまでつれていったくれたおれいがいいた
             かったの それでわたし、おくじょうまでいったの

          呂布:でいりぐちのとびらをあけようとしたら、はなしごえがきこえた・・・
             きくつもりはなかったの でもね、きいちゃった

          陳宮:やはり、聞かれていましたか
          呂布:ねえ、陳宮クン あなたはいったいなにものなの?
          (陳宮、顔を逸らす)
          陳宮:・・・
          (呂布、陳宮の顔を覗き込んで言う)
          呂布:おしえて くれる、よね?


          (傘の中から陳宮を見る呂布)
          呂布:・・・
          (雨に打たれながら呂布を見る陳宮)
          陳宮:・・・
          (二人とも無言)

          (やがて陳宮は覚悟を決めたように呂布を見て、口を開く)
          陳宮:僕は・・・義勇軍に参加をしている勢力に所属する一人です
          呂布:ぎゆうぐん・・・じゃあ、わたしのこと、赤兎ちゃんのこと、ぎょくじ
             のこと そういうことみんなしってたの?
          陳宮:・・・はい
          呂布:いままで、わたしが恆たちとたたかったことも?
          陳宮:知っていました
          呂布:なんで? なんでそんなだいじなこと、いままでおしえてくれなかったの?
          陳宮:すいません・・・
          呂布:わたしが陳宮クンのてきだから?
          陳宮:それは違います 僕は呂布さんを敵だとは思っていません
          呂布:じゃあなんで!?
          陳宮:それは・・・
          (陳宮、言葉に詰まる)

          (呂布、声が震える)
          呂布:ねえ陳宮クン いままで、わたしをだましてきたの?
          陳宮:騙すつもりはありませんでした でも・・・今まで隠して来たのは事実
             です

          呂布:そ それじゃ、もしかして あなたも董卓みたいにぎょくじをさがして
             いるの?
          陳宮:・・・そうです

          (無言の陳宮。呂布の目が涙で潤んでくる)
          呂布:うそだよね? ほんとはそんなこと、ぜんぜんないよね? ね?
          (呂布は懇願するように陳宮を問いただす)
          呂布:じょうだんだよね? わたしをからかってるだけだよね? わたし、あ
             たまがあんまりよくないから、それにきがついてないだけだよね? ね?
             ねえってば! 
          (呂布、陳宮の肩を掴んで訴えかける)
          (呂布は陳宮を揺する。呂布の目から涙がこぼれ落ちる)
          (呂布は泣き声になって来る)
          呂布:『ほんとうはちがう』っていって! 『じょうだんだよ』っていって!
             『からかっている』いってよ!
          (呂布にされるがままの陳宮)

          (しばらくして呂布は揺するのを止める)
          呂布:うっ・・・うっ・・・ねぇってばぁ・・・・
          (陳宮、絞り出すように返事をする)
          陳宮:・・・本当です

          (呂布、陳宮から手を離す。首を大きく左右に振りながら後ずさりする)
          呂布:や・・・いや いや
          (呂布、涙声)

          呂布:いやぁああぁっっ!!
          (呂布、陳宮に背を向けてその場から駆け出す)
          陳宮:呂布さんっ!?
          (手を伸ばす陳宮)
          陳宮:待って下さい! 呂布さん!
          (陳宮も呂布を追って走り出す)

          (頭から雨に降られながら走っている呂布と陳宮)
          (陳宮、走りながら呂布に呼びかける)
          陳宮:呂布さん! 呂布さん!
          (呂布は陳宮から逃げるように無我夢中で走る)
          呂布:うっ・・・うぅ・・・
          (呂布の目尻からは涙が流れている)

          (陳宮、必死で呂布を追うが引き離される)
          陳宮:待って下さい!
          (更に引き離される陳宮。呂布の姿が徐々に遠くなって行く)
          (すると呂布は急に道を曲がってしまう)
          (住宅の壁に邪魔をされて呂布の姿が見えなくなる)
          陳宮:あっ!?

          (陳宮も慌てて呂布に続いて角を曲がる。しかし既に呂布の姿はない)
          陳宮:しまった!
          (立ち止まり道を見回す陳宮。しかし呂布はいない)

          陳宮:呂布さん? 一体どこへ・・・
          (途方に暮れて立ち尽くす陳宮)
          陳宮:呂布さん・・・


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          シーン4 公園
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          (雨が降りしきる公園)
          (その公園の広場の中央に人のシルエットがある)
          (雨がカーテンのよう降っている為、シルエットはぼやけて見える)

          (シルエットに近づくと、立っている呂布である事が解る)
          (呂布、ずぶ濡れになったまま、下を向いて肩を震わせている)
          (両腕の拳を固く握り締め、ボロボロと涙をこぼす)

          呂布:うぇ・・・ ひっく ひっく・・・そんな・・・いやだよぅ・・・そん
             なのって・・・

          (呂布の背後に何者かが近づき、腕を伸ばす)
          (その手には傘の柄が握られている)

          呂布:うぐっ・・・ひっく・・・
          (呂布の頭上が急に桃色の影に覆われる)
          呂布:ひっく・・・えっ?
          (驚いて上を見る呂布。呂布の視界には桃色の傘が見える)
          呂布:だ、だれ?
          (振り返る呂布。そこに居たのは張遼)

          呂布:え、あ! 張遼さん!?
          (張遼は優しく語りかける)
          張遼:あらら、随分大変そうね?

          (呂布、後ずさりして張遼から離れる)
          呂布:な、なにをするき!?

          張遼:何もしないわ ただ、話がしたくて
          呂布:わたし、しってるわ ほんのちょっとまえまで、あなたが董卓のけらい
             だったこと
          張遼:そっか・・・屋上に来てたのね
          (呂布、張遼を睨みながら無言で頷く)
          張遼:盗み聞きは感心できないわ・・・と言いたい所だけど
          (張遼、呂布をよく観察する)
          (呂布は全身ずぶ濡れになっている)
          張遼:あらあら・・・酷い格好ね このままだと風邪を引くわ とりあえずウ
             チに来て
          呂布:・・・わな、でしょう? そうはいかないわ
          張遼:あら、そんな事ないわよ
          呂布:だって、張遼さんは董卓のけらいだったじゃない!

          (張遼、肩をすくめる)
          張遼:でも今はもう、家来でも何でもないわ あなたも聞いてたんでしょ?
          呂布:それは・・・そう、だけど
          (言葉に詰まる呂布)

          張遼:それにこう言っちゃなんだけど、罠ならもっとうまく張るわ それに本
             当に私があなたの敵なら罠なんて面倒な事はしないわ さっき声をかけ
             る前に背中から攻撃してたけど?
          呂布:う・・・で、でも
          張遼:私はもう董卓の家来じゃないから、あなたをどうこうしても今更何の意
             味もないのよ
          呂布:・・・
          張遼:それでも罠だと思うなら赤兎馬を呼んでも構わないし、戟を取り出して
             も構わないわ・・・まだ疑う?

          (呂布と張遼はお互いを見据える。二人の視線が交錯する)
          呂布:(うそ ではないみたいね)

          (呂布、どうにか納得して返事をする)
          呂布:・・・わかった いく
          張遼:決まりね ほら、こっちに来て 本当に風邪引くわよ
          呂布:いまだけよ? 
          張遼:はいはい 解ってるわよ
          (張遼、呂布を自分の傘に招き入れる)

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          第11話終了
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