「機動武将まじかる☆呂布リン!」
第12話 『わたしくんしゅになっちゃった(仮)』Bパート
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シーン1 帰路(その1・住宅街)
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(住宅街の夜道。雨は上がっている)
(雲が晴れて空には月と星が見える)
(道は月明かりと街灯に照らされており比較的明るい)
(呂布と陳宮が並んで歩いている)
(呂布は道路を見ながら歩き、何かを思案している様子)
(陳宮は左手で2本の傘の柄を握っている)
(呂布は無言)
呂布:(・・・陳宮クンと、ちゃんとおはなしをしたほうがいいのかな)
(陳宮、空を見て呟く)
陳宮:雨は止んだようですね
(呂布、陳宮の方を見ないで余り気の無い返事をする)
呂布:あ うん・・・そうみたいね
(どことなくぎこちない会話)
(陳宮は顔を呂布に向ける)
陳宮:すっかり暗くなりましたね
(呂布は道路を見たまま)
呂布:そうね・・・ちょっとおそくなっちゃったから
陳宮:呂布さんの家はこっちの方向で合ってますか?
呂布:うん あってるよ・・・
(陳宮、小さなため息をついて前へ向き直る)
陳宮:はぁ〜
(後頭部に右手を当て、髪をかく陳宮)
陳宮:(さっきの事をきちんと謝りたいのですが・・・呂布さんの気持ちはも
う落ち着いているでしょうか?)
(陳宮、困り顔)
陳宮:(何とかうまく話が出来れば良いのですが)
陳宮:う〜ん・・・
(呂布、陳宮のうなり声に気付いて陳宮を見る)
(呂布、陳宮の顔を覗き込む)
呂布:(あれ? 陳宮クンどうかしたのかな)
(陳宮は考えに夢中で呂布が見ている事に気が付かない)
陳宮:(でも話すタイミングを間違えると逆効果になりかねませんからね)
(呂布は陳宮の様子が気になる)
呂布:(陳宮クン、なにかをかんがえてるみたい)
(呂布、陳宮の顔を見ながら歩く)
呂布:(なにをかんがえているの? わたしのしらないこと?)
(まだ呂布の視線に気づかない陳宮)
陳宮:・・・
呂布:(やっぱりわたし、陳宮クンのこと、しりたい)
(立ち止まって呼びかける呂布)
呂布:あの、陳宮クン
(陳宮も足を止めて呂布を見る)
陳宮:はい?
(呂布、一呼吸置く)
呂布:わたし張遼さんから陳宮くんのこと、すこしだけどおはなしをきいたの
(ちょっと驚く陳宮)
陳宮:張遼さんから・・・?
呂布:でもね まだしらないことのほうがおおいの
(呂布は胸の前で両手を組む)
呂布:だから、おしえてほしいの あなたのこと・・・
(陳宮を見つめる呂布)
陳宮:(うっ・・・)
(陳宮は呂布の表情にドキッとする)
(陳宮の顔色が少し赤くなる)
(呂布は陳宮に向かって1歩迫る。そして自分の顔を陳宮に接近させる)
(お互いの吐息が感じ取れる程に接近してしまう呂布は気付いていない)
(呂布のピンク色をした唇が動く)
呂布:ねえ、陳宮クン おねがい
陳宮:(呂布さんの顔がこんなすぐ近くに・・・)
(陳宮、呂布に見とれる)
陳宮:(はっ)
(すぐに我に返る陳宮、自分を戒める)
陳宮(そうじゃなくて! 呂布さんは真面目な話をしてるんです!)
陳宮:わ、解りました
(赤い顔で答える陳宮)
(その言葉を聞いて呂布は陳宮から離れる)
(呂布、組んでいた手を離す)
呂布:ねぇ 陳宮クンはなんでぎょくじをさがしてるの? ぎょくじのちから
がほしいから?
陳宮:いいえ、違います
(陳宮は少し悲しそうに言う)
陳宮:・・僕は指令に従っているだけです
呂布:それじゃあ陳宮クンはだれにしたがってるの
陳宮:それは・・・
(陳宮は答えようかどうか迷う)
(呂布は真剣な眼差しで陳宮を見つめている)
陳宮:・・・「曹操孟徳」という人物です 僕はその人に従っています
呂布:ぎゆうぐんのひと?
陳宮:ええ、そうです ・・・いずれは呂布さんも直接会うかも知れません
呂布:わたしもあうかもしれない? そのひと、どんなひと?
陳宮:そうですね・・・
(陳宮は顎に手を当てて考えながら喋る)
陳宮:・・・文武両道と言いましょうか、何でもこなせるすごい人ですね 何
事にも厳しいと思えば、逆に非常に寛容な面もあったりして、他人を惹
き付ける魅力というか、そんな物を持っています リーダーとしては非
常に優秀な人だと思います
呂布:ふぅん・・・陳宮クンはどうして、そのひとにつかえているの?
陳宮:それは・・・
(陳宮、ちょっと考えてから答える)
陳宮:僕は今、その人のお世話になっているんです 僕は以前にその人を助け
た事があって、それがきっかけで知り合ったのですが・・・今では逆の
立場になってます
呂布:陳宮クンも赤兎ちゃんのことはしってるんだよね?
陳宮:はい 最初から知っていました
呂布:じゃあまさかはじめてあったとき、ぶつかったのもわざと?
(陳宮、手を振って否定)
陳宮:いいえ、違います ぶつかった事そのものは本当に偶然です 偶然では
あるんですが・・・それだけではなかったんです
(陳宮は含みのある言い方をする)
呂布:ただのぐうぜんじゃなかった・・・?
陳宮:そうですね ある意味では
(首を傾げる呂布)
呂布:え? どういうことかしら・・・いまいちよくわからないんだけど
陳宮:僕と同じ勢力の一人が目撃したんです 赤兎馬が裏山に落下する所と、
同じタイミングで誰かが裏山に入っていく所を 「誰か」というのは呂
布さんの事だったんですが・・・僕はその調査を命じられて、この地域
にやって来た訳です
呂布:あのとき、あかいひかりをみたのはわたしだけじゃなかったんだ・・・
陳宮:はい
陳宮:僕は呂布さんの人相をあらかじめ聞いていましたが・・・今だから言い
ますが、ぶつかった時はかなり驚きましたよ
(陳宮は頭を掻く)
呂布:・・・
(呂布、記憶を辿って陳宮とぶつかった時を思い出す)
※↑第2話Bパート・シーン2辺りの事です
(呂布は右手人差し指を頬に当てる)
呂布:あのときはそんなふうにはみえなかったけど・・・
陳宮:表情に出さないようにしましたから まだ呂布さんと赤兎馬の関係に確
信があった訳ではなく、「関係がありそうな人物が見つかった」という
程度にしか思いませんでしから
呂布:わたしのくらすにてんこうしてきたのは・・・
陳宮:あれは偶然ではありません 呂布さんも既に聞いているでしょうが、僕
がわざわざクラスを指名したという話は本当です
呂布:それはなんで?
(陳宮、少し言葉に詰まる)
陳宮:・・・作戦上、呂布さんの近くにいた方が都合がいいと思ったからです
(呂布は残念そうに呟く)
呂布:さくせん・・・ね
陳宮:すいません 最初はそうでした
(呂布、陳宮の言葉に引っかかる)
呂布:『さいしょ』?
(陳宮、慌てて言葉を付け足す)
陳宮:あ、いえ その 今はそれだけではない、という訳です
呂布:『それだけではない』・・・? え、それって・・・
(陳宮、取り繕う様に喋る)
陳宮:と、とにかく僕は赤兎馬の落下現場を確かめる為に放課後に裏山へ行き
ました
呂布:あのとき、陳宮クンがうらやまにいたのはそういうわけだったのね
陳宮:はい
(頷く陳宮)
陳宮:呂布さん、あの時裏山には李粛も現れました 覚えてます?
呂布:うん
陳宮:実は李粛も赤兎馬の落下現場を見に来ていたようでした・・・つまり、
恆達も赤兎馬の落下を目撃していたという事です
呂布:そっか 陳宮クンたちがみたくらいだから、おなじように恆たちがみ
てもおかしくないもんね・・・
(呂布、ある事を思い出す)
呂布:とちゅうで李粛がいなくなっちゃったけどあれはどうして?
陳宮:李粛には恆へ手を引くように伝言を頼んだ後、お引取りを願いました
・・・残念ながら効果はあまり無かったようですが
呂布:(じゃあ張遼さんのいったとおり、あのときから陳宮クンはわたしや赤
兎ちゃんをたすけてくれてたんだ)
陳宮:裏山以外でも恆は手出しをして来ました 何回かは防ぐ事が出来たの
ですが・・・それでも僕が至らないばかりに呂布さんに直接被害が及ん
でしまう事がありました
呂布:ちょくせつ・・・?
陳宮:史跡公園の時や関羽さん、張飛さんの攻撃、そして恆の屋敷の件や前
回の建設予定跡地での事です
(呂布は陳宮の言葉を遮る)
呂布:ちょっとまって それじゃあ、ほかにもなにかあったっていうこと?
わたしがしらないだけで恆はなんかいもこうげきをしかけてたの?
陳宮:・・・はい
(驚く呂布)
呂布:張遼さんはそんなこと、いってなかったけど・・・
陳宮:それは・・・単純に張遼さんも知らなかったからだと思います 張遼さ
んが呂布さんと関わるようになったのはほんのつい最近の事ですから、
全部を把握してる訳ではないのでしょう
呂布(あ・・・そういえば)
(呂布、張遼の言葉を思い出す)
張遼:『・・・少なくとも今言った事は間違いなく彼がやった筈よ 他にもま
だ、私達が知らないだけで何かあると思うし・・・』
陳宮:・・・恆の手下はわざわざ失敗した事を主君に対し事細かに報告する
とは思えません 下手に報告をすれば逆に責任を取らされる恐れがあり
ますから、都合の悪い報告はなるべく揉み消していたのでしょう
(陳宮は肩をすくめる)
呂布:(じゃあ、しらないあいだに陳宮クンがわたしをまもってくれてたって
こと・・・?)
(呂布の胸がドキリと高鳴る)
陳宮:先ほどの事についても僕にもっと知力と武力があれば、呂布さんが恆
の手下と直接勝負しなくて済んだんです
(陳宮は悔しそうに言う)
陳宮:僕の知力が足りないばかりに呂布さんの武力に頼ってしまう計略ばかり
でした 僕のせいで何度も迷惑をかけてしまいました
(呂布、大きく首を振る)
呂布:ううん、そんなことない! わたしが恆のてしたにかてたのは、まち
がいなく陳宮クンのおかげだよ! 陳宮クンのたすけてくれたから、わ
たし、かてたんだよ!
(陳宮は真剣な表情で呂布に言う)
陳宮:しかし、呂布さん 本来あなたは玉璽の騒動とは無関係でした 赤兎馬
の事があるとは言え、やはり関わり合いになるのは良くありません
(呂布は落ち着いた表情で話す)
呂布:・・・わたしね、まえにもせきとちゃんにおなじようなこといわれたの
陳宮:(やはり、赤兎馬は止めたのですか)
呂布:そのときもわたし、かかわるのをやめないっていうことをいったの
陳宮:何故ですか?
(呂布は後ろで手を組んで歩き出す)
(陳宮、その場から動かずにロ呂布の姿を見守る)
(呂布、歩きながら話し出す)
呂布:赤兎ちゃんのがんばりをむだにしたくはないし
(呂布が街灯の下を通ると街灯の光がスポットライトの様に呂布の姿を照らす)
呂布:それにわたし、ぎょくじのことはもうしってるから、このまましらんぷ
りはできない
(呂布、立ち止まって身体を回転させ陳宮を振り返る)
(呂布は可愛らしく小首を傾げて言う)
呂布:いまも、それはかわらないよ?
陳宮:・・・
呂布:わたし、きめたんだ ぎょくじのあらそいにけっちゃくがつくまで、や
めないって
(数メートルの距離を置いて向かい合う呂布と陳宮)
(呂布と陳宮の間には街灯の光が丸く地面を照らしている)
呂布:・・・
陳宮:・・・
(呂布は陳宮を穏やかな目で見つめる)
(陳宮も呂布を落ち着いた目つきで見返す)
陳宮:呂布さん、どうやら本気のようですね
呂布:うん そうだよ
陳宮:・・・一つ、訊いてもいいですか?
呂布:なぁに?
(陳宮は一呼吸置いた後、尋ねる)
陳宮:呂布さん あなたがもし、玉璽を手に入れたらどうするつもりですか?
呂布:うーん・・・それは
(呂布は眉根を寄せて考える)
陳宮:(答えによっては、僕は呂布さんと敵になってしまいます・・・!)
(陳宮は呂布の答えを息を呑んで待つ)
呂布:・・・たぶん、なにもしないよ
(呂布、考えた割にはあっさり答える)
陳宮:え それは何故ですか?
呂布:わたし、ぎょくじにはきょうみがないから ただ、このそうどうがおわ
ってくれればそれでいいの
(安堵して胸を撫で下ろす陳宮)
陳宮:それなら良かったです・・・
(逆に呂布はきょとんとして問い掛ける)
呂布:あれ、わたしにぎょくじをとられちゃうかもしれないのに「よかった」
なんていっていいの?
陳宮:あ、そうですね 確かに・・・
(陳宮、そこである事に気付く)
陳宮:(しまった! 今度は呂布さんに僕が玉璽を手に入れた時の使い道を訊
かれるかも知れません!)
(陳宮は慌てて呂布に声を掛ける)
陳宮:いつまでもここで立ち話もなんですから、行きませんか?
呂布:あ、うん そうね
陳宮:(今はまだ、誰にも僕が玉璽をどう扱うかを聞かれる訳には行きません)
(再び並んで歩き始める呂布と陳宮)
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シーン2 帰路(その2・呂布の自宅周辺)
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(お互いの顔を見ながら歩いている呂布と陳宮)
(陳宮、歩きながら呂布に諭す様に話す)
陳宮:とにかく、今後は一人で何かしようとするのは余り得策とは言えません
呂布さんは引き続き赤兎馬と協力して下さい それと、呂布さんにも味
方がいた方が良いのですが、あまり大人数だと目立ち過ぎます できれ
ば少数精鋭にした方が良いでしょう
呂布:うん・・・でも、だれかみかたになってくれるようなひとがいるかしら
(陳宮は腕を組んで考える)
陳宮:問題はそこなんですよね 他の人を巻き込むような事はしたくないんで、
既に玉璽の話を知っていて、その上で協力してくれそうな人がいればい
いのですが・・・果たして居るかどうか・・・
呂布:・・・
(黙り込む呂布)
陳宮:呂布さん?
(呂布、陳宮の顔を見ながら何かを考えている)
呂布:(・・・いちばんだいじなこと、きかなくちゃ・・・)
呂布:陳宮クン
(呂布、一旦息を吸い込んで気持を落ち着かせる)
呂布:陳宮クンがいままで、わたしにだまっていたのはなんで?
陳宮:・・・僕は呂布さんに可能な限り平穏無事な生活を送って貰いたいん
です もし話せば今まで以上に迷惑をかけてしまいます
呂布:めいわくだなんて、そんなことないよ
陳宮:しかし呂布さんには危険に遭って欲しくありません
呂布:・・・
陳宮:さっきも呂布さんは争奪戦に参加を続ける事を言ってましたが・・・僕
は正直、素直に賛成できません もし呂布さんの身に何かあったら・・・
(陳宮の言葉を聞いて呂布は再び立ち止まる)
呂布:あ・・・!
陳宮:どうかしました?
(陳宮も呂布に合わせて再び立ち止まる)
呂布:(やっとわかった 陳宮クンがいままでないしょにしてたのは、わたし
のことをしんぱいしてくれてたから・・・いつもわたしのことをかんが
えてくれてたんだ・・・)
(陳宮の名前を噛み締めるように呟く呂布)
呂布:陳宮クン・・・
(きゅっ)
呂布:(なんか、むねがくるしい・・・)
(呂布は潤んだ目で陳宮を見る)
(呂布、頬を染めながら喋る)
呂布:わたしのこと、そこまでかんがえてくれてたんだね わたし、ぜんぜん
きがつかなった・・・
(呂布、一旦言葉を区切る)
呂布:陳宮クン・・・ありがとう
(艶っぽい目で陳宮を見る)
陳宮:(う・・・)
(照れた陳宮は少し動揺する)
陳宮:そ、そんな お礼なんていいですよ
(呂布は恥ずかしそうに)
呂布:それから さっきはわたし、とつぜんにげだりして・・・ごめんなさい
わたし、陳宮クンのことぜんぜんわかってなかった
(陳宮に向かって頭を下げる)
(更に慌てふためく陳宮)
陳宮:だ、黙っていた僕が悪いんです 呂布さんが謝る事はありません 本来
なら呂布さんに話しておくべき事なのに・・・本当にすみませんでした
(陳宮も頭を下げる)
(お辞儀をしたままの二人)
(両者とも腰を曲げた姿勢のまま同時に顔だけを上げる)
(呂布と陳宮の視線が合う)
呂布:(あっ 陳宮クンとめがあっちゃた)
陳宮:(呂布さんと目が合ってしまいました)
(そのままの姿勢でぼんやりと見詰め合う呂布と陳宮)
(二人とも無言)
呂布:・・・
陳宮:・・・
(しばらくして我に返る陳宮)
陳宮:(あっ・・・いけません こんな所で道草を食ってると呂布さんの帰り
が遅くなってしまいます)
(陳宮は曲げた腰を元に戻し、話しかける)
陳宮:えーと、それじゃあお互い様という事で・・・これでどうです?
呂布:うん・・・陳宮クンがそれでいいなら、わたしもいいよ
(呂布も陳宮も緊張の色が抜け、リラックスした表情)
陳宮:今度こそ、参りましょうか?
呂布:うんっ
(笑顔で返事をする呂布)
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シーン3 帰路(その3・呂布の自宅前)
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(並んで歩いている呂布と陳宮)
(先ほどとは違ってギクシャクした様子がない)
(よく見ると、呂布は陳宮に寄り添うように歩いている)
(呂布は歩きながら時折陳宮の顔を上目遣いで見ている)
(陳宮はそんな呂布の様子には気付かずに前方を見ながら普通に歩いている)
陳宮:呂布さんに嫌な思いをさせてしまいまましたね・・・
呂布:あの そのことはぜんぜんきにしてないっていうと、うそになっちゃう
んだけど・・・
(呂布は俯いてしみじみと話す)
呂布:・・・でもね、それよりも陳宮クンとおはなしができてよかった ほん
とうに
(穏やかで満足そうな笑みを浮かべる呂布)
呂布:そういえば
(呂布は何かを思い出したように顔を上げる)
呂布:ところで陳宮クン、なんでわたしが張遼さんのおうちにいること しっ
てたの?
陳宮:あ、それは・・・その
(陳宮は人差し指で自分の頬を掻きながら恥ずかしそうに話す))
陳宮:実はあなたの家の方に電話で聞いたんです
(手をポンと叩いて納得した様子の呂布)
呂布:あー、そっか! なーんだ いがいとかんたんなことだったのね!
(呂布は頷きながら喋る)
呂布:うんうん でもさすが陳宮クンね そういうことにすぐきがつくなんて
陳宮:いえ、気が付いたわけじゃなくて・・・他に思いつかなかっただけです
(陳宮は照れ臭そうに話す)
陳宮:あの時は、その、無我夢中だったというか お手数ですが、後で家の方
に「ご迷惑をおかけしてすいませんでした」とお伝え下さいませんか?
(呂布は両手を後ろ手に組む)
呂布:ううん だいじょうぶ! きっときにしてないから
(陳宮、微笑む)
陳宮:そうだとありがたいですね
(呂布も陳宮を見ながら微笑を返す)
呂布:(もしかしてむちゅうだったのは、わたしのこときにしてくれてたから
なの? もしそうだったらうれしい・・・)
(陳宮、歩きながら周囲を見渡す)
陳宮:えーと、この辺りじゃないですか? 呂布さんの家って
呂布:そう・・・かな?
(呂布はキョロキョロと周囲を見渡す)
(呂布の視界に見覚えのある家が映る)
呂布:あ ほんとだ
(呂布は残念そうに小さな声で呟く)
呂布:もうついちゃったんだ・・・
(呂布の声には気が付かない陳宮)
陳宮:どの家ですか?
(一見の家を指差す呂布)
呂布:うん・・・わたしのおうち、そこなの
陳宮:解りました
(呂布と陳宮、道路に面したある一軒の家の鉄柵に近づく)
(鉄柵に手をかける呂布)
陳宮:呂布さん これ、お返ししますね
(陳宮は呂布の傘を差し出す)
(呂布は力なく受け取る)
呂布:ありがとう・・・
(陳宮、呂布の様子に気付く)
陳宮:急に元気がなくなったみたいですがどうかしました?
(呂布は小さく首を振って答える)
呂布:あ、ううん なんでもないの
(呂布は陳宮に聞こえない程小さな声で呟く)
呂布:でも、ほんとうはあるかも・・・
(陳宮は呂布の呟きには気付かない)
陳宮:それじゃ、お休みなさい 呂布さん
呂布:うん・・・ おやすみなさい・・・
(呂布は鉄柵を開いて一歩、自宅敷地内に入る)
(呂布は振り返って陳宮を見る)
(そこにはにこやかに呂布を見守る陳宮立っている)
(陳宮、呂布に向かって軽く手を振る)
(呂布は急に赤面してしまい急いで鉄柵を閉め、自宅玄関の扉を開く)
(一旦家の中に入るが、すぐに扉の端に手をかけ、玄関から頭だけ覗かせる)
(扉越しに陳宮を見つめる呂布)
(陳宮、呂布の振る舞いに戸惑う)
陳宮:どうしたんですか?
(照れ笑いをする呂布)
呂布:えへへ・・・
(そのまま上目遣いに陳宮を見る)
呂布:なんか、このままおうちのなかにはいっちゃうのが もったいないよう
なきがして・・・
(陳宮、首を傾げる)
陳宮:何が勿体無いんですか?
呂布:えっと・・・それは
(呂布は陳宮の視線から顔を逸らしそっぽを向く)
呂布:な、ないしょだよ
(呂布は横目で陳宮に視線を送る)
陳宮:は、はあ
陳宮:(よく解りませんが・・・無事に送ったから、まあ良しとしましょう)
陳宮:では僕はそろそろ行きます
呂布:うん
(その場を立ち去ろうとする陳宮)
(呂布がまだ見ている事に気付く)
陳宮:あの、呂布さん 中に入って下さって結構ですよ
(呂布、首を左右に振る)
呂布:ううん いいの みおくらせて
陳宮:そうですか?
(呂布は少しさびそうな顔をする)
呂布:それじゃ、おやすみなさい 陳宮クン
(呂布は陳宮に向かって小さく手を振る)
陳宮:では失礼します
(陳宮、軽く一礼してその場を辞去)
(呂布を送って来た道を歩いていく陳宮)
(陳宮は時々後ろを振り返りながら呂布の自宅前から去って行く)
(呂布、陳宮の姿が視界から見えなくなるまで見送っている)
(陳宮の姿が見えなくなると、途端に寂しそうな顔になる)
呂布:(陳宮クンとはなれるのはつらいよ・・・わたし、いつも陳宮クンの側
にいたい・・・)
(呂布は玄関の扉を端をぎゅっと握り閉める)
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シーン4 張遼の自宅
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(張遼、玄関で膝を抱えうずくまって座っている)
(顔を膝に埋めている)
(張遼の身体が時折震え、嗚咽が漏れ聞こえる)
張遼:えぐっ・・・ひっく
(腕の隙間から張遼の横顔が見える)
(張遼はきつく目を閉じていて、目尻からはポロポロと涙がこぼれる)
(集合住宅の廊下を歩く足音が徐々に近づいてくる)
(そのまま足音は張遼の自宅前で停止する)
(ピンポーン)
(呼び鈴が鳴る)
(だが張遼は音には気付かず、反応しない)
張遼:うっ う・・・
(少し間が空いて再び呼び鈴が鳴る)
(ピンポーン)
張遼:(あれ・・・鳴ってる?)
(今度は気付く張遼。膝に埋めていた顔を上げる)
張遼:(もぉ、誰なのよ こんな時に・・・)
(張遼は渋々立ち上がり、扉に取り付けられた広角レンズを覗き込む)
(レンズの中に陳宮の姿が映っている)
張遼:(あっ・・・! 陳宮くん!?)
(張遼、慌てて服の袖で目を擦り、もう一度レンズを覗く))
(やはり扉の前に立っている陳宮が見える)
張遼:(うそ! なんで!?)
(張遼は慌てて扉越しに返事をする)
張遼:は、はーい!
(陳宮も鉄扉越しに控えめに声を出す)
陳宮:御免下さい あの、陳宮です
張遼:ちょっと待って!
(張遼はレンズから顔を離しノブに手をかける)
(しかし扉を開けようとして思いとどまる)
(張遼、ノブから手を離し、両手で自分の頬や目の周りを触ってみる)
張遼:(ヤダ・・・私、今たぶん すっごく酷い顔してるわ)
(張遼、鉄扉の向こう側に向かって話し掛ける)
張遼:ごめん・・・私、今酷い格好してるの 直接会うのはちょっと勘弁して
貰える?
陳宮:あ、はい 夜分、度々お騒がせしてすいません・・・お邪魔なら今日は
引き上げますが
(張遼、少し間が空いてから答える)
張遼:ううん、大丈夫 それよりどうしたの? 呂布さんと一緒に帰ったんじ
ゃなかったの?
陳宮:呂布さんならちゃんと自宅まで送りました
張遼:え・・・? それじゃあ、まだ何か御用?
(陳宮、ちょっと照れ臭そうに言う)
陳宮:その、お礼を言いたくて
張遼:お礼?
陳宮:呂布さんと話す機会を作ってくれて・・・ありがとうございます
張遼:(私が陳宮くんと呂布さんの仲を取り持った様に思われてるの?)
(張遼の胸に強い痛みが走り、張遼の目にまた涙が滲む)
(張遼は扉に背中をもたれさせて寄りかかる)
(張遼、小さく深呼吸して気持を落ち着けようとする)
張遼:そんな、お礼なんてやめて 私・・・そんな言われるような事してない
(張遼は右手で自分の胸を抑えてその痛みを堪える)
張遼:私が勝手にやった事だし、あなたには借りがあるし・・・それだけ
(張遼、再び小さく深呼吸して指で目元を拭う)
張遼:だ、だから き、気にしないで・・・ね?
陳宮:それなら僕も同じです 僕が張遼さんに感謝するのだって僕の勝手です
張遼:陳宮くんの勝手?
(張遼、思わず目を瞬かせる)
張遼:(ふふっ 変な理屈)
(張遼、思わず苦笑)
張遼:(やっぱり私、陳宮くんには敵わないのかも)
(張遼は天井を向いて大きく息を吐いて肩をすくめる)
張遼:はぁー・・・あーあ・・・
張遼:(ダメで元々なんだからこの際思い切ってみよう)
(張遼は目元を拭いながら話し掛ける)
張遼:・・・ねぇ、陳宮くん 変な事訊いていいかな
陳宮:何ですか?
張遼:(さあ私、覚悟を決めなさい)
(ちょっと間が空く)
張遼:・・・プレハブ小屋でも訊いたけど、陳宮くんは呂布さんをどう思って
るの? 「武力が強い」とか評価の意味じゃなくて、陳宮くん自身がど
う思うのか・・・教えて
張遼:(答えは解ってるのに・・・何で訊くの? 私ってバカね・・・)
陳宮:そうですね・・・最初は指令を遂行する為の対象者に過ぎませんでした
張遼:それで 今は?
陳宮:今、ですか
(陳宮、腕を組みちょっと考えてから口を開く)
陳宮:今は以前とは違いますね
(張遼は恐る恐る尋ねる)
張遼:ど う違う・・・の?
(張遼はきつく目を閉じて覚悟する)
陳宮:一緒に過ごす内に、段々と・・・その、情が移った・・・と言いましょ
うか
張遼:(思った通りになっちゃった・・・ううん、これでいいのよ これで)
(張遼は口をへの字に曲げ左右の手で拳を作り、強く握り締める)
(陳宮はそのまま言葉を続ける)
陳宮:僕には呂布さんと・・・良い友達となれればいいな、と思ってます
(張遼、驚いて顔を上げる)
張遼:・・・えっ?
張遼:ど、どういう事?
(陳宮は照れたように話す)
陳宮:変な風に思われるかもしれませんが・・・何というか、利害関係で結び
つく・・・とかじゃなくて、普通の友達として付き合って行きたいです
張遼:お友達・・・? じゃあ私の事はどう思ってるの?
(張遼、言ってから両手で慌てて口を塞ぐ)
張遼:(ちょっとヤダ! 私何言ってんの!?)
(陳宮は張遼の様子を知る由も無く、普通に答える)
陳宮:張遼さんは・・・出会った経緯は余り良くなかったかも知れませんが、
でも今は違います
(陳宮、一旦言葉を区切って少し恥ずかしそうな顔をする)
陳宮:その、前よりもっと仲良くなりたいと思っています
張遼:え・・・それって・・・?
陳宮:我ながら妙な物言いですね はは は・・・
(陳宮、力なく笑う)
(陳宮はすぐに真面目な表情になる)
陳宮:僕が言えるような立場じゃないのは重々承知していますが、呂布さんも
張遼さんも玉璽の騒動に巻き込まれてしまった、言わば被害者です
陳宮:こんな言い方は何ですが、せめて張遼さん、呂布さんには平穏無事な生
活を送って貰いたいんです
張遼:えっ!?
(張遼、扉に預けていた背中を離し、扉に向き直る)
(陳宮、寂しそうに言う)
陳宮:・・・僕にはそう言う生活はどうも簡単では無さそうなので・・・だか
ら僕は「普通に仲良くなりたい」なんて事、考えてしまったりするんです
張遼:(陳宮くん・・・そんな風に思ってたんだ・・・)
(陳宮、苦笑い)
陳宮:どうも自分勝手で妙な理屈になってしまいますね ご迷惑かも知れませ
んが・・・
(張遼は陳宮の言葉を遮る)
張遼:そ、そんな事ないわ!
(張遼は扉にすがり付くようにして、そのまま一気に言葉を喋る)
張遼:私だって、も、もっとあなたと仲良くなりたい! 私、もう誰の家来で
もないし、そんなの関係なく、もっと仲良くしていきたいの!
(張遼、喋った後、肩で荒く息をする)
(陳宮は驚いたように問い掛ける)
陳宮:僕でも 良いんでしょうか?
張遼:私 陳宮くんとなら、ううん 陳宮くんじゃないと嫌なの・・・だから
これからも一緒にいようよ そんな悲しくなるような事、言わないで
陳宮:・・・ありがとう、ございます
(陳宮、扉に向かって深く頭を下げる)
(少し立ってから陳宮は頭を上げる)き上げます お手間をおかけしました
張遼:ううん・・・いいの こちらこそ、中にも上げないで、ごめんね
陳宮:いえ、急に押しかけて来たのは僕ですから ・・・ではお休みなさい
張遼:うん ・・・気を付けて帰ってね?
陳宮:はい
(陳宮、扉の前から歩き出す。陳宮の足音が聞こえる)
(徐々に陳宮の足音が遠くなり、やがて聞こえなくなる)
張遼:(陳宮くん、あんな風に考えていたなんて)
(張遼は扉に額をくっつけ、目を閉じる)
張遼:(陳宮くんが呂布さんをどう思っていたとしても・・・ううん そんな
事関係ない!)
(張遼、首を大きく横に振る)
張遼:(私は・・・やっぱり私は陳宮くんの側にいたい)
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第12話終了
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