〜〜前回までのお話〜〜
あのねっ、私の名前は呂布っ☆
武将小学校に通う4年生よ!てへっ!
ある日私は学校へ行く途中、空から降ってきた赤兎ちゃんと出会ったの。赤兎
ちゃんは私に「玉璽を探す手伝いをして欲しい」って頼んできたわ。私も最初
はちょっと
戸惑ったけど、こうなったら私も玉璽を探すのに協力するよ!一緒に頑張ろう
ね、赤兎ちゃん!
そんな私達の前に現れた陳宮クン。董卓の刺客をやっつける内に私、陳宮クン
と少しずつ仲良くなって来たんだけど・・・あぅ〜陳宮クンのことを考えると
なんか身体が熱くなって来るよぅ。でも今度は張遼さんがやって来たの。張遼
さんは可愛いコだと思うけど、陳宮クンにべたべたし過ぎじゃないの?なんか
胸のあたりがモヤモヤとする・・・なんだろう、この気持ち?
そんなドキドキの毎日だったけど、大変!陳宮クンが貂蝉にさらわれちゃった!
これも董卓の仕業ね。こうなったら陳宮クンを助けに行くしかない!赤兎ちゃ
ん、張遼さん、一緒に行こう!(*'-')


「機動武将まじかる☆呂布リン!」
第13話 『しばらくのさよなら(仮)』Eパート
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シーン1 (正面玄関前エントランス)
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(呂布、貂蝉の巨体を引きずりながら屋敷の正面玄関に向かって走って来る)
(正面玄関前にはロータリーの跡がある。ロータリーはしっかりと舗装されて
いる)
(呂布はロータリーの舗装面に注目する)
呂布:(あそこなら、あしがふんばれる よし、まわりにだれもいない!)

(呂布は中庭から正面玄関前の舗装路に飛び出る)
(アスファルトに背中から叩きつけられる貂蝉)
呂布:うおおおおおぉぉぉぉぉ!
(貂蝉を引きずって疾走する呂布)
(摩擦で貂蝉と路面の間から火花が飛び散り、路面に引きずった跡が黒い筋に
なって残る)

(呂布、急停止)
(貂蝉の身体は慣性で止まらず、路面から一瞬浮き上がる)
貂蝉:オウッ!
(呂布はこの慣性を利用して貂蝉を戟で一本釣りにする)
呂布:でえええぇぇぇいっ!
(呂布はそのまま貂蝉を放り投げる)

(貂蝉の巨体が宙に舞う)
(貂蝉、空中で姿勢を整えて足から着地する)
(足の接地と同時に呂布に向かって突進する貂蝉)
貂蝉:フンッ!
(走りながら拳を振りかぶる貂蝉)
(貂蝉の拳が「ブォン」と唸りを上げて呂布に放たれる)
(呂布、待ち受けていたように貂蝉の懐へ飛び込む)
(貂蝉の拳が呂布の頭のすぐ脇をかすめる)
(呂布、怯まず更に深く踏み込む)
呂布:えいっ!
(呂布、貂蝉のみぞおちに強くアッパーを打ち込む)

(ズン!)

(呂布の拳が手首まで貂蝉の腹にめり込む)
(拳の威力で貂蝉の身体が「く」の字に折れ曲がり、その巨体が路面から浮き
上がる)
貂蝉:ゴフッ・・・
呂布:(よし、かなりのてごたえ! このままあたまのいしを・・・)
(呂布は貂蝉の額に手を伸ばそうとして、射るような視線に気付く)
(貂蝉の目は冷たい光を放ちながら呂布を捉えている)
(貂蝉の丸太のような腕が呂布を絞め殺そうとガバッと覆い被さって来る)
呂布:きゃっ!?
(呂布、すぐに飛びすさり貂蝉と間を空ける)
(貂蝉の腕が空振りする)

(呂布の顔に冷や汗が伝う)
呂布:(あぶなかった すこしおくれてたら、あのうでにひねりつぶされてた)
(呂布はすかさず戟を両手で構え直す)
(呂布に対抗するように貂蝉の額の石が赤く輝き出す)
呂布:ていっ!
(素早く戟を打ち込む呂布)
(唸りをあげる戟)

(貂蝉は刃に向って自分の右手を突き出す)
(戟が貂蝉の右手に吸い込まれるように突き刺さる)
(貂蝉、戟を手の平で受け止める)
(刃がザックリと手に食い込む)
貂蝉:・・・
(貂蝉はそのまま戟をガッシリと握り締め、呂布の戟を封じる)
呂布:ああっ しまった・・・!
(貂蝉、空いた左手で呂布の横顔を殴りつけてくる)
(呂布、咄嗟に頭を下げ右肩を盾にして拳を受ける。呂布の肩に猛烈な痛みが
走る)
呂布:つっ!
(呂布は小さく悲鳴をあげ顔をしかめる)

(貂蝉、更にもう一発殴る為に瞬時に拳を引く)
(その瞬間的な無防備状態をを見逃さない呂布)
呂布:(しめた!)
(呂布、右足で上段を蹴り込む)
(強烈な蹴りが貂蝉のこめかみに突き刺さる)
貂蝉:グアッ・・・!

(貂蝉の巨体がグラリとよろける)
(貂蝉、その拍子に戟を放してしまう。追い討ちをかける呂布)
(呂布、戟をバットのように持つと貂蝉の胸を力一杯に打ち据える)
呂布:とんでけぇっ!
(バチンと音がして戟が打ち据えられる)

(貂蝉、うめく間もなく宙へ飛ばされる)
(貂蝉の巨体が扉を失った正面玄関から屋敷の中へ吸い込まれるように飛び込
んでいく)

(呂布もすぐに貂蝉を追って屋敷の中へ走りこむ)
呂布:(かなりのてごたえはあった・・・けど、まだゆだんはできない)

(呂布、貂蝉を追って屋敷に飛び込んでいく)


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シーン2 (屋敷正面ホール その1)
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(屋敷の正面ホールに入った呂布。中は明かりがなく非常に暗い)
(扉を失った玄関や口欠けた窓から外の月明かりがホールに射し込み、おぼろ
げに中を照らす)

(呂布が目をこらすとホールは非常に広く天井も高い事がわかる)
(ホールの床にはくすんだ赤い絨毯が敷かれている)
(あちこちにボロボロになったカーテンやガラス製のランプ、丸められた壁紙
が放置されている)
(ホールの奥は廊下へと続く通路がある)
(ホール左右と正面には大きな階段があり、それぞれが上階へと続いている)

(貂蝉の姿は呂布の視界からは見つからない)
呂布:(貂蝉がいない? ・・・そうか、まだうごけるんだ なんてつよさな
   んだろう)
(呂布は戟を構えて周囲を警戒する)
呂布:(気配はする どこにかくれてる?)

(呂布、あたりを見回しつつホールの中央まで移動する)
(ホールは静まり返っている)
呂布:(おかしいな ここにいるのはまちがいないのに・・・)

(呂布が貂蝉を探していると天井からミシリと物音がしてパラパラと埃が落ち
てくる)
呂布:・・・ん?
(その直後、頭上から呂布めがけて何か大きな物体が降ってくる)
呂布:きゃあっ!?
(呂布、跳躍して転がるように逃げる)

(呂布の跳躍と同時にドガンと大きな音がして何かが床にめり込む)
呂布:(やねがくすれた?)
(呂布が音のした方を向くと下半身が床に突き刺ささった貂蝉の姿が見える)
(貂蝉は首を動かしてすぐに呂布の姿を捉える)
(床から跳躍して抜け出す貂蝉)

(呂布、体勢を立て直し両手ですばやく戟を構える)
(呂布は床を這うよう様に姿勢を低くして貂蝉に突進)
(貂蝉の間合いに入る呂布)

貂蝉:ガアアッ!
(貂蝉、頭上で両手を組んで思い切り振り下ろす)
(叩き潰されそうになる呂布)
(しかし呂布、僅かの差で貂蝉の腕の振りよりも速く懐に飛び込む)

呂布:かくごっ!
(呂布は突進の勢いを利用して下から戟を突き上げる)
(一瞬、戟全体が青白く光を帯びる)
(戟の切っ先が貂蝉の額を狙う)
(貂蝉、瞬時に身体をねじって自らの左胸を戟に向かって突き出し額を守る)

(ドスン、という音がして貂蝉の左胸に戟が突き立てられる)
呂布:うっ!?
(戟が貂蝉の胸に深々と刺さる)
(同時に貂蝉が胸の筋肉に力を込める)
(貂蝉の鋼の様な筋肉が戟を押さえ込む)
(呂布、すぐに戟を引き抜こうとするが、ガッチリと押さえられて抜けない)

(貂蝉は呂布を見下ろす)
(呂布、貂蝉の視線を跳ね返すように叫ぶ)
呂布:でええええええやああああぁぁぁぁ!!
貂蝉:ウグッ・・・
(貂蝉が初めて苦しそうな表情を見せる)
(呂布は戟を右脇に抱えると、引くのをやめ逆に力いっぱい押し込む)
(更に深く貂蝉に突き刺さる戟)
呂布:ふ、んっ・・・!
(呂布、足に力を込めると前進を再開)

(呂布はブルドーザーのように貂蝉の巨体を押す)
呂布:うおおおぉぉ・・・
(始めは一歩二歩と、次には歩くように、そして段々と勢いづく)
(貂蝉の背中が内部から盛り上がり、背中を破って戟の切っ先が突き出る)
(戟が貂蝉の身体を貫通しても呂布は突進をやめない)
呂布:うわあああああああ!
(呂布、貂蝉を串刺しにしたまま更に突進を続ける)
貂蝉:ギギ ギ
(貂蝉は右手で呂布の頭を掴んで抵抗を試みる)
(呂布、左手を戟から離すと腕を突き上げ貂蝉の喉輪を掴む)
(思わず仰け反る貂蝉、気管を押しつぶされ奇妙な唸り声を漏らす))
貂蝉:ガフッ フッ
呂布:ああああああああぁぁぁぁ!
(貂蝉はもがいて何とか逃れようとする)
(呂布、壁に向かって迷わず突き進む)

(貂蝉の背後にホールの壁が迫る)

ドスン!

(貂蝉の巨体が壁に激突)
(大きな音がして壁全体がビリビリと震動)
(貂蝉、身体を貫通した戟で壁に磔にされる)
(呂布に喉輪を押さえられていたせいで貂蝉の頭は壁にめり込む)

(肩で大きく荒い息をする呂布)
呂布:はぁ はぁ はぁ
(貂蝉は串刺し状態から抜け出そうもがく)
貂蝉:フンッ! フンッ!
(貂蝉が身動きする度にバラバラと壁の破片が呂布と貂蝉に降りかかる)
(呂布は貂蝉に跳ね飛ばされそうになる)
呂布:(まだこんなにちからがのこってるなんて・・・あ!)

(呂布、貂蝉の額の赤い石はまだ光を失っていない事に気付く)
呂布:(そうか、あれをひっこぬかないとだめなんだ)
(呂布、戟から一旦手を放す)
(呂布は貂蝉の体躯をよじ登るようにして貂蝉の額に手を伸ばす)

(呂布は赤く輝いている石を片手で引っ張ってみる)
(石はガッチリと貂蝉の額にくっついて動かない)
呂布:く くくっ・・・と、とれない!
(貂蝉の腕が伸びてきて呂布の手首を掴んで振りほどこうとする))
貂蝉:ウ ウガ
呂布:でいっ
(呂布は邪魔な貂蝉の腕を蹴り飛ばして叫ぶ)
呂布:おとなしくっ しなさいっ!
(呂布、今度は両手で石を掴んで渾身の力で引く)
呂布:んっ・・・!
(呂布は貂蝉の顔面と肩口に足をかけ力を込める)
呂布:ん、んんん!
(メリメリと音がして額から石が少し浮き上がる)
貂蝉:グァ・・・
(貂蝉の手足がバタバタともがく)

呂布:でぇいっ!
(掛け声と共に額から石を引き剥がす)
呂布:やった! とれた!
(その途端に貂蝉はピタリと動かなくなる)
(呂布は勢い余ってバランスを崩す)
呂布:きゃっ!?
(呂布、貂蝉の上半身から転がり落ち、床に尻餅をつく)
呂布:きゃんっ! あいたたた・・・
(呂布は貂蝉を見る)

(貂蝉は壁に串刺しにされたまま動かない)
呂布:こ、これでいいのかな
(呂布、おそるおそる貂蝉に近づくと指先で軽く突付いてみる)
(貂蝉は全く反応なし)
呂布:なんかだいじょうぶそうね・・・

(反応がない事を確認すると呂布は胸を撫で下ろす)
呂布:はぁーっ・・・
(大きく息をつく呂布)
呂布:わたし、かった・・・のかな?

呂布:ふぅー
(呂布、額の汗を拭う)
呂布:あれ?
(ふと自分の手が赤い石を握り締めたままである事に気づく)
呂布:そういえばこのいし、なに?
(呂布は握っていた手を開く)
(手の中にある石はまだ光を湛えている)
呂布:これ、まだひかってるけどいいのかな

(呂布の後方、やや離れた位置にある屋敷の奥へと続く廊下)
(廊下が突如、パッと明るくなる)
(続いてすぐに風が唸るような音がする)

(音の方を振り返る呂布)
呂布:やだ! まだなにかあるのっ!?
(廊下の奥から人影がこちらに向かって走ってくる)
(人影は手前と奥の二人分が見える)

呂布:だ、だれかいるよぅ・・・え、えーと、そうだ! げきをぬかなきゃ!
(呂布はポケットに石をしまうと貂蝉に刺さったまま戟を掴む)
(戟を引き抜こうとする呂布)
呂布:んんっ! さっきむちゅうでつきさしたから、ふかくささったのかな
(呂布、四苦八苦しながら戟を引き抜くと反射的に構える)
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シーン3 (屋敷正面ホール その2)
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(廊下を見据える呂布)
(だんだんと人影の姿がはっきりしてくる)
(手前の人影の正体は陳宮)

呂布:あっ! あれは陳宮クン!?

(陳宮、あちこち黒焦げになりながら走って来る)
(陳宮の奥にいる人影も正体がわかる)
(多くの人影は董卓だった)
(董卓は腰に帯剣し、両手に蝋燭の燭台を持っている)
(燭台の上には大きな蝋燭が赤々と燃えている)
董卓:それ!
(董卓の持つ蝋燭から炎が陳宮に向かって伸びる)
陳宮:うあっち!
(陳宮、炎から逃れるように廊下からホールへと転がり出てくる)

(陳宮に向かって呼びかける呂布)
呂布:陳宮クン! 陳宮クーン!!
(呂布、陳宮に駆け寄ろうとする)
(声に気づく陳宮、呂布を見る)
陳宮:呂布さん!?
(陳宮、一瞬驚いたように呂布を見るがすぐに我に返り叫ぶ)
陳宮:こっちに来てはいけません! 逃げて下さい! 早く!

(立ち止まる呂布)
呂布:な、なんで!
陳宮:董卓が来てます! 貂蝉と二人がかりで来られたらあなたでも危ない!
呂布:貂蝉ならだいじょうぶ やっつけたよ!
陳宮:ええっ!?
(陳宮、今度は心底驚いた表情)
陳宮:まさか、本当に?
呂布:うん 李儒があかいへんないしをもってきたけど、やっつけたよ! ほらっ!
(呂布、陳宮に見えるように赤い石を掲げる)
(陳宮、急に表情が強張る)
陳宮:ではそれを持って逃げて下さい! 外には赤兎馬がいますね!? 早く!
   すぐに董卓が来ます!

(陳宮がそこまで言った途端に董卓の声が響く)
董卓:そこに居たか!
(その途端にまた陳宮に炎が浴びせ掛けられる)
陳宮:うわっち!!
(陳宮、転がるようして何とか火をかわす)
呂布:陳宮クン!
(陳宮に駆け寄ろうとする呂布)

(董卓、廊下の奥からホールに入って来ると呂布の姿に気付く)
董卓:そこに居るのは呂布かっ そうはさせんぞ
(董卓は呂布の目の前に炎を放つ)

(呂布のすぐ目の前に炎が壁のように立ち上がる)
呂布:きゃあああっ!?
(呂布、驚いて足を止める)
陳宮:呂布さん!

(董卓、呂布が怯んだ隙に陳宮に追いつく)
陳宮:くっ!
(逃げようとする陳宮)
(しかし董卓の腕が陳宮の首を捉え、締め付ける)
陳宮:ぐ、ぐっ
董卓:お主にとどめを刺さずにおいて正解だったようだのう

(呂布、董卓に捕まえられた陳宮の姿を見て叫ぶ)
呂布:まってて! いま、そっちいくから!

(董卓は陳宮を盾にする)
董卓:動くな! こやつがどうなっても構わぬのか!
(燭台の蝋燭が一瞬大きく燃え上がる)
(陳宮の顔が赤く照り返される)

呂布:あぅ・・・
(呂布、やむなくその場で立ち止まる)

(陳宮、呂布に向かって叫ぶ)
陳宮:呂布さん、逃げなさい! 早く!
董卓:静かにしろ! おい貂蝉! こっちへ来い! 貂蝉!
呂布:よんでもむだよ 貂蝉はわたしがやっつけた

(ニヤリと笑う董卓)
董卓:フン、そんなハッタリが通用すると思ったか?

呂布:はったりなんかじゃない
(ある方向を指差す呂布)
(呂布が指し示すその先に崩れかけた壁に埋もれるよう貂蝉が倒れている)
(続いて呂布は掌にある赤く輝く石を董卓に見せる)
董卓:うぬ! そ、それは・・・
(董卓の顔が強張り冷や汗が伝う)
董卓:おい李儒! 李儒っ!

呂布:李儒なら・・・
(呂布は一瞬言葉につまり、苦悩の表情を見せる)
呂布:李儒は、貂蝉にやられたわ

(苛立ちをあらわにする董卓)
董卓:クソッ この肝心な時にあの愚図! 使えん奴め!
(董卓の態度に反感を覚える呂布)
呂布:ひどい じぶんのみかただったのに

(呂布を見る恆)
董卓:こうなったら止むを得んな・・・それをこちらに寄越せ
(董卓の言葉に反応して叫ぶ陳宮)
陳宮:董卓の目的はその石です! それを持って早く行って下さい!
董卓:ええい、黙れ!
(董卓、腕力で陳宮を床に捻じ伏せる)
陳宮:うぐっ・・・!
董卓:早くせい さもなくばこやつを焼くぞ!
(蝋燭の炎が大きく燃え上がる)
(絞り出すように声を出す陳宮)
陳宮:だ だめ で・・・す 渡しては、いけま・・・
董卓:このっ まだ言うか!
(董卓、更に陳宮を押さえつけて黙らせる)
(苦しげな陳宮)

呂布:いやーっ! 陳宮クン!
(泣きそうな顔をした呂布)
呂布:わかった! わたす! わたすからやめて! 陳宮クンをはなしてっ!

陳宮:呂布さん・・・!
(陳宮、その声を聞くと急に大人しくなる)
(董卓、ニヤリと笑う)
董卓:よし、それでよい ではそれを床に置いてそこから離れろ

(呂布は無言で頷くと董卓に睨みながら石を床に置く)
(後ずさりして石から離れる呂布)
(石は相変わらず赤い光を放っている)

呂布:さあこれでいいでしょ!? 陳宮クンをはなして!

(董卓、先ほど打って変わって余裕のある声で答える)
董卓:まだだ それが本物かどうか改めてからだ

呂布:ほんものよ!

董卓:今、確かめる・・・そのまま動くなよ お前は来い
(董卓、陳宮を首から引きずってる赤い石に近づく)

(陳宮は無言で董卓に従う)
(だが陳宮の目付きは何かを狙って鋭くなっている)

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シーン4 (屋敷正面ホール その3)
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(董卓は呂布を警戒しながら赤い石に手を伸ばす)
董卓:動くんじゃないぞ・・・
(董卓の腰にある剣が床につきガシャンと金属音がする)

(董卓は片方の手に持っていた燭台を床に置き、石に手を伸ばす)
(反対の腕は陳宮の首をしっかりと締め上げている)
(董卓は赤い石を手に取ると、右に左に回して慎重に眺める)
董卓:本物のようだな
呂布:それでいいでしょ? 陳宮クンをはなして
(董卓、呂布に向かってニヤリと笑う)
董卓:そうはいかんな
(床の置かれた燭台の炎が大きく燃え上がる)
呂布:はなしがちがう!
董卓:愚か者め
(董卓、呂布に気を取られた隙に陳宮への注意が薄れる)

陳宮:(今です!)
(陳宮は董卓の腕を振り払い、恆に向って体当たり)
陳宮:でいっ!
董卓:うおっ
(不意討ちを食らってよろける董卓)
(そこへ陳宮が掴みかかってくる)
(董卓は振りほどこうとして陳宮の顔面を手で押しのける)
董卓:うぬ! 邪魔をするな!
(離されまいともがく陳宮)
陳宮:う、くっ
(董卓の力が勝り陳宮は無理やり引き剥がされる)
董卓:この、離れろ!
陳宮:うあっ!
(恆に蹴り飛ばされ床に転がる陳宮)
呂布:陳宮クン!
(駆け寄ろうとする呂布)

董卓:クソッ 手間を取らせおって
(董卓は自分の手元を見る)
(董卓、持っていたはずの石が無くなっている事に気づく)
董卓:うぬ!? ど、どこへ行った!?
(周囲を見回す董卓)
(見ると倒れた陳宮の脇に赤い石が転がっている)
董卓:お主の仕業か!
(董卓、自分の腰に手を回し剣を抜こうとする)
(だが腰にはあるべきはずの剣がなく、鞘のみがある)
董卓:うっ、剣が?

(床から立ち上がる陳宮)
(陳宮の手には董卓が帯びていた剣が握られている)

恆:小僧、何の真似だ!
陳宮:そちらにまた奪われる位なら、この場で砕き散らします!
(陳宮、その場で剣を振りかぶる)
陳宮:でぇいっ!
(陳宮は掛け声と共に石に剣を振り下ろす)
(剣の切っ先が石に命中する)

(「ガチンッ」と金属音が響く)

(剣が当たった衝撃で床から跳ね上がって転がる石)
(しかし石には傷一つない)
(驚く陳宮)
陳宮:え? ええっ!?
(陳宮、再び剣を振りかぶる)
陳宮:今度こそ!
(もう一度剣を振り下ろす))
(再び「ガチンッ」という音)
(石は剣が当たった拍子に離れた所へ転がって行く)
(今度も表面に全く傷がつかない)

(陳宮、自分の持つ剣と石を見比べて冷や汗を浮かべる)
陳宮:そんな・・・七星剣でも壊せないなんて・・・
董卓:愚か者め! そんな物で壊れる代物ではないわ!
(陳宮の背後から炎の燃えあがる音する)
陳宮:しまった!
(振り返ろうとする陳宮。だが間に合わない)
(董卓、陳宮に炎を飛ばす)
(炎は無防備になった陳宮の背に向かって飛ぶ)
陳宮:(逃げきれません!)
(陳宮は咄嗟に身体を縮めて身を守ろうとする)

(そこへ飛び込んで来る呂布)
呂布:あぶないっ!
(呂布、陳宮と炎の間に割って入ると炎に向かって戟を振る)
呂布:えいっ!
(呂布は炎を叩き落すように払いのける)
(戟が炎に当たると、炎はボンッと音を立て散り散りになって消えていく)

(驚く董卓)
董卓:チッ これならどうだ!
(董卓は次々と炎を飛ばす)
(呂布に向かって炎が襲い掛かる)

(呂布に炎の筋が幾条も迫る)
呂布:そんなのつうようしないっ!
(呂布、炎を右に左に払い散らす)
(散り散りになった火の粉があちこちに散らばっていく)
(幾つかの火の粉は床に放置された建材やガラクタに降りかかる)
董卓:ええい! このっ このっ
(董卓は再び次々と炎を飛ばす)
(呂布、炎をことごとく払いのける。その度に炎は音を立てて散る)
(周囲には炎の残りかすの様に火の粉が散らばって行く)

董卓:何と、我が炎を全て払うとは・・・
(呂布、董卓に向かって戟を構える)
呂布:陳宮クンにてだしはさせない!
(呂布の持つ戟が青白く輝いている)
(董卓を睨みながら陳宮に小声話し掛ける呂布)
呂布:陳宮クン、だいじょうぶ?
(陳宮、小さく頷いて答える)
陳宮:僕は大丈夫です それよりもあれを何とかしないと
(陳宮は離れた所に転がっている赤い石を指さす)
呂布:ね、さっきからきになってたんだけど、あれってなんなの?
陳宮:玉璽です おそらく
呂布:あれが!? ほんとうに!?
(驚く呂布)
呂布:そんな だってあれは赤兎ちゃんがこっちにくるときになくしたって・・・
陳宮:説明は後です とにかく今は董卓から玉璽を遠ざける必要があります
(呂布、陳宮の言葉に頷く)
呂布:・・・わかった あれを董卓にわたさなければいいのね?
(呂布、玉璽の方へ走り出そうとする)
董卓:邪魔はさせんぞ
(同時に董卓がニヤリと笑う)

董卓:ふはははははは! これを喰らうがよい!
(そう言うと同時に蝋燭の炎の他に、床の廃材からも一気に火が燃え上がる)
呂布:ええっ、なんで!? いつのまに!?
陳宮:しまった さっき払った火の粉が引火したんです!
董卓:気づくのが遅い!
(董卓がそう言うと炎が瞬く間に呂布と陳宮を取り囲む)
(炎は壁のように立ちはだかる)
陳宮:董卓め・・・最初からこれを狙ってましたね

董卓:先程は火を呼べるものが蝋燭のみであった故、少々力が足りなかった
   だが今は存分に我が力が発揮できる
(燃え上がる炎の向こう側に董卓のるがたが陽炎で揺らめいて見える)
董卓:さすがにこの火勢ではその戟も役には立つまい
(董卓を睨みつける呂布)
呂布:くっ!
董卓:呂布は我が手元に置いておきたかったが・・・この際仕方あるまい
(董卓、顔に勝ち誇った微笑を浮かべる)
董卓:どれ、玉璽を回収するか お主らはそこでじっくりと焼かれるが良い
(そう言うと董卓は呂布と陳宮を置き去りにして玉璽を拾いに行ってしまう)

(炎の中に取り残される呂布と陳宮)

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