「機動武将まじかる☆呂布リン!」
第10話 『だいピンチ!ちりょくがたりない!(仮)』Bパート
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シーン1 建設予定地跡(呂布のいる場所)
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(空にはごく薄いが広がってきている)
(以前に呂布と李粛が対面した建設予定地跡。場所的には同じ敷地内の別の一角)
(周りは雑草が伸び放題で、やや離れた所に廃材などが積まれているのが見える)
(雑草の草むらの中に立つ人影が2つ。恆、李儒の姿)
(恆、傍らにいる李儒に声をかける)
董卓:それにしても、本当に奴は来るのであろうな
李儒:来ます これまでの結果から呂布は誘いに乗リ易い傾向がありますので
(董卓、顎に手を当て半分納得したような顔をする)
董卓:ふむ・・・で、例のものは?
李儒:用意出来てございます 成分を精製し、効能は強くなっております
(董卓、李儒に向かって身を乗り出す)
恆:まことか? しかし呂布以外の者にまで作用しては困るぞ
李儒:それは問題ありません
董卓:ほう?
李粛:先ほど、実験を致しました所、ある程度以上の高い知力の者では、作用
しない事が確認されました 逆に申しますと呂布の知力が報告通りなら
ば、かなりの効果を発揮すると予想されます
(董卓、身体を震わせて笑う)
恆:そうか、ふふふふふ 今度こそ呂布を我が物に
李儒:殿? 我らの目的は・・・
(董卓、うるさそうに返事)
恆:わかっておる! 重要なのはあれの奪還で・・・
李儒:あっ! 殿、御覧下さい やって来ました
(李儒、恆の前方を指差す)
(呂布が赤兎の背に乗って跡地に入ってくる。手に戟はまだ準備していない)
呂布:(たくさんのひとのけはいがする)
赤兎:ほーちゃん、危なくなったらすぐ逃げるわよ?
呂布:うん
(呂布、頷く)
(赤兎、恆からやや遠い場所で停止。呂布は赤兎から降りない)
(呂布、大きく息を吸い、大声をだす)
呂布:きたわ! ほんとにはなしをするきはあるんでしょうね!?
恆:当然である
赤兎:妙な事をしたら承知しないわよ
董卓:やれやれ 疑り深いのう
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シーン2 建設予定地跡(陳宮のいる場所)
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(予定地跡の別の場所、中途半端に建設資材が積み上げられている)
(資材のうち鉄製の物は赤錆が浮いている)
(もとは建設用の土砂の山だったものは表面を雑草が埋め尽くしている)
(他にもプレハブ小屋や色々な物が放置されたままになっている)
(その物陰から物陰へ、移動する人影がある)
(人影のアップ。正体は陳宮)
(陳宮、鋼材が積まれた裏側へ廻ると慎重に頭を出し、様子を窺う)
陳宮:(もう始まってしまいましたか)
(陳宮の視線の先、やや距離が離れた所に呂布と恆の姿がある)
(呂布と董卓は何かを会話しているようだが声は届かいて来ない)
陳宮:(恆の事です きっと何か仕掛けているに違いありません)
(陳宮、呂布の周辺を注視する)
(呂布のいる辺りは周囲を雑草が取り囲んでいる)
陳宮:(あそこまで、どうやって身を隠して近づきましょうか・・・?)
(陳宮の背後に立つ人影。気配に気づき振り返る陳宮)
陳宮:(しまった!?)
(陳宮、突如後ろ手に押さえつけられる)
陳宮:うっ!?
(陳宮、あっという間に組み伏せられ、後ろ手を縄で縛られる)
声:しばらくの間、大人しくして
(陳宮の背後から小さく声がする。姿はフレームの外なので不明)
(陳宮、後ろを見ずに口を開く)
陳宮:待ち伏せられていた、という事ですか?
声:・・・
陳宮:(迂闊でした 呂布さんに注意を取られすぎてしまいました)
声:さあ、立って こっちに来て
(大人しく従う陳宮)
陳宮:(しかしまずいですね 何とか脱出しなくては)
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シーン3 建設予定地跡(呂布のいる場所)
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呂布:なにかたくらんでいるんじゃないでしょうね?
恆:この通り、何も武器は持っておらん ほれ
(恆両手を上げ何も持っていない事を示す。腰にも武器らしき物はない)
恆:李儒 そちも見せろ
李儒:はっ
(李儒も同様に丸腰である事を示す)
(董卓と李儒、二人とも腕を降ろす)
恆:ささ、呂布殿も赤兎馬から降りて、こちらにこられよ 赤兎馬はその場
で控えさせておけばよい なぁに、余は赤兎馬に何もせぬ
(赤兎に囁く呂布)
呂布:だいじょうぶかな?
赤兎:うーん どうやら本当に武器は持ってないみたいだけど・・・
恆:まだ何か疑うか?
赤兎:李粛をもっと下げて!
(恆、李粛に手で合図する。李粛は恆のかなり後方に下がる)
(李儒、下がりながらふと脇見をして、何かに気付いたような表情をする)
李儒:殿、少しよろしいですか
董卓:何だ?
赤兎:また何か企んでるんじゃないでしょうね?
(李粛、赤兎に向かって言う)
李儒:そこの裏で用を足してくるだけだ すぐに戻る
(李儒、やや離れた所に立っている古びたプレハブ小屋を指差す)
赤兎:早くしなさいよ
李儒:解っておる
(李儒はプレハブ小屋へ向かって小走りに進み、やがて小屋の陰へ消える)
(呂布、その様子を見ている)
(呂布の視界からでは廃材の山等が邪魔で小屋の様子が解らない)
呂布:(なにやってるのかしら・・・?)
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シーン4 建設予定地跡(陳宮のいる場所)
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(陳宮、小屋の脇まで連れてこられる)
(陳宮、無言)
声:ここで止まって
陳宮:・・・
(声の主の顔はまだ画面の枠外)
(声の主は懐から小さな懐中電灯を取り出す)
(声の主、小屋の向こう側にむけて明りを明滅させ何か合図を送る)
(やがて足音が近づいて来て、小屋の陰から李儒が姿を現す))
チ樹:ふむ どうやら捕らえたようだな
陳宮:・・・『離せ』と言っても無駄でしょうね
李儒:聡明だな
(李儒、陳宮と目線の高さが同じ位置になるまで一旦しゃがむ)
(李儒、そのまま陳宮の顎を手で持ち上げる)
李儒:それにしても 貴公が今まで我々を翻弄してきたのか
陳宮:何の事でしょうか?
李儒:ふん 今更とぼける必要もあるまい
(李儒、手を離すと立ち上がる)
李儒:さぁて、どうしてくれよう?
陳宮:このまま逃がしてくれる事を期待してますよ
李儒:それは出来ない相談だな その代わり一つ、貴公に良い事を教えてやろう
陳宮:楽しみですね
(李儒、自信に満ちた眼で陳宮を見下ろす)
李儒:今回はな、呂布奉先とは別にもう一つ目的があったのだ
陳宮:・・・
李儒:呂布奉先を支援する何者かが存在する事は以前から判明していた
(陳宮は李儒の言葉を続ける)
陳宮:そして今日はその正体を直接確かめようとした・・・という事ですか
李儒:察しが良いな その通りだ
陳宮:それで、件(くだん)の支援者とやらをどうするつもりですか?
李儒:さぁてな それはこれから明らかになろう おい
(李儒、陳宮を取り押さえている人物に命じる)
声:はっ!
李儒:この者を見張っておけ
声:了解しました
(李儒、後ろを向いて立ち去って行く)
声:さ、立って
(陳宮はゆっくりと立ち上がり、後ろを見ずに話す)
陳宮:やはりこういう訳でしたか 張遼さん
(声の主が画面に出る。その正体は張遼)
(張遼、悲しそうに言う)
張遼:あなたにこんな事、したくなかった
陳宮:李儒にでも聞かれたら厄介な事になりますよ?
張遼:・・・うん こっちへ来て
(張遼、陳宮を捕縛している縄を持って連行する)
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シーン5 建設予定地跡(呂布のいる場所)
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董卓:さあ呂布殿、これでどうだ?
(赤兎、呂布に囁く)
赤兎:武器は持ってないみたい これで一応、準備は出来たわ
呂布:わかった おりる
(呂布は赤兎から降りる。すると雑草の中に呂布の姿が腰まで埋まる))
赤兎:気をつけて あんまり恆に近づいちゃダメよ
呂布:うん、わかった
(静かに歩み寄る呂布。歩くたびにガサガサと草が揺れる)
(赤兎、緊張の面持ちでその様子を窺う)
(呂布、董卓と対面する。その距離3m程度)
(呂布は緊張した表情で口を開く)
呂布:きょうはなんのごよう?
董卓:手紙に書いてあった通りだ 貴殿と友好関係を結ぼうと思ってな
呂布:きゅうにどういうつもりかしら
董卓:今までの事は全て水に流そう、というだ
呂布:ながす? どういうこと?
(董卓、ニタリと笑う)
董卓:つまり、今までの貴殿のしでかした無礼な振舞いは忘れてやろう・・・
と言っておるのだ
(呂布、カチンと来る)
呂布:ちょっと、なによそれ! そんなのあべこべよ!
董卓:ほほう?
呂布:しかけてきたのはそっちでしょ!?
(董卓、挑発するように喋る)
董卓:何を言っておる? 本来赤兎馬は余の所有物だ 余に返上して然るべきではないのかな
呂布:そんなのへりくつじゃない!
董卓:やれやれ、折角の機会を逃すとは、愚かなリ・・・話はこれで終いだ
董卓:出あえ!
(そう言った途端、周囲のあちこちから呂布を囲むように草むらが小山のように隆起する)
(隆起した草山から一斉にバサッと草が散る)
(その正体は雑草で擬装していた董卓の家来)
呂布:あっ! まちぶせしてたのね!? はんそくよ!
董卓:勝手に吠えるがよい
(後ろに下がる董卓。
赤兎:やっぱり始めから話をする気なんてなかったのね!
赤兎:ほーちゃん! 今、そっちに行く!
(走り出そうと脚を踏み出す赤兎)
赤兎:うっ!? 脚が動かない!?
(赤兎、自分の足元を見る。脚には縄が絡まっている)
赤兎:そんな、いつの間に?
(突如、赤兎の周囲の草が隆起し、董卓の家来が現れる)
董卓:赤兎馬よ、伏せておいたのは呂布の周りだけではないぞ?
赤兎:くっ!
(呂布、赤兎を振り返る)
呂布:赤兎ちゃん!?
董卓:よそ見をしている暇はあるのかな?
(呂布を包囲した董卓の家来がジリジリと呂布に迫る)
(呂布、董卓を見据える)
呂布:いいわ けっちゃく、つけてあげる!
(呂布、ポケットに手を入れ小さくなった戟を取り出す)
(呂布は念じる)
呂布:(おおきくなって!)
(元のサイズに戻る戟。呂布はそれを片手で掴んで振る)
呂布:さあ、どっからでもかかってきて!
董卓:ふふふ・・・かかれっ!
(恆の家来達が一斉に飛び掛ってくる)
華雄:今日こそ前回の借りを返す!
胡軫:呂布! 覚悟!
呂布:(きたわね)
(呂布、次々と放たれる斬撃・打突等をことごとく防ぐ)
呂布:(見える・・・よし! これならいける!)
(呂布、反撃に転じる。呂布が戟を振るたびに家来達が吹き飛ばされていく)
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シーン6 建設予定地跡(陳宮のいる場所)
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(放置されたプレハブ小屋に入っていく陳宮と張遼)
(かつて作業員が出入りしていたと思われる小屋)
(小屋の中央辺りにパイプ椅子、壁にはホワイトボードや掲示物等が放置されたままになっている)
(パイプ椅子にも錆が浮き出ており、余計に寂れた感じがする)
(陳宮、一歩小屋の中へ入り、立ち止まる)
陳宮:(何とかして脱出しないと・・・)
(陳宮は顔を動かさず、目だけ動かして小屋の中を見回す)
陳宮:(何か利用できそうな物はありませんかね)
張遼:どうかした?
陳宮:いえ、何でもありません
張遼:ちょっとじっとしててね
(張遼、急に陳宮の縛めていた縄をほどく)
陳宮:え? そんな事していいんですか?
張遼:ホントは駄目なんだけど、陳宮くんは特別 お互い知らない者同士でもないし
陳宮:それはどうも
張遼:でも妙な動きはしないで 私、一応あなたをを見張らなくちゃいけないから
陳宮:・・・
(張遼、肩をすくめる)
張遼:まあ、逃げ出そうとしても私がとめちゃうけどね ほら、あなた知力は
高いけど、武力はそうでもなさそうだから
(張遼、手にした矛を陳宮に見せる)
張遼:それに私、なるべくコレは使いたくないから ね?
陳宮:解りました
張遼:そう、ありがと
(張遼、パイプ椅子を指差す)
張遼:そこに椅子があるから座って待ってて 椅子の汚れは払ってあるから
(陳宮、溜め息)
陳宮:やれやれ 始めから何もかもお見通しだったのですね?
(陳宮、大人しくパイプ椅子の所まで進み、椅子に座る)
張遼:うん・・・まあね でも私は指令に従っただけだから
(陳宮の前に張遼が立つ)
張遼:しばらくの間、そこで我慢して
(陳宮、張遼を見上げる)
陳宮:それで、呂布さんをどうする気ですか?
(張遼、俯く)
張遼:それは・・・ごめん 実は私も知らされてないの 私が聞いたのは「侵
入者がいた場合は捕らえよ」って事だけなの
陳宮:そうですか
張遼:多分、呂布さんの方はすぐに済むと思うから それが終ったらここから出してあげる
陳宮:・・・
(張遼、残念そうに呟く)
張遼:それにしても、陳宮くんだったなんて
陳宮:張遼さんの予想通りでしたか?
張遼:・・・なんとなく、そうじゃないかと思ってたけど 陳宮くんこそ、私の事、知ってたみたいね
(陳宮、大げさに首を横に振る)
陳宮:いえ、全然存じませんでした
張遼:うふふ 嘘 驚かなかったじゃない
陳宮:驚きましたよ 態度に出てないだけです
(張遼は微笑を浮かべながら)
張遼:いつ気付いたの?
陳宮:ついさっきです 張遼さんに捕まえられた時です
張遼:あくまでとぼける気ね? まあ、いいけど
(張遼、尋ねにくそうに問い掛ける)
張遼:ねぇ、陳宮くんは何で呂布さんをどう思ってるの・・・?
陳宮:うーん・・・強い武力の持ち主ではないでしょうか
張遼:そうじゃなくて陳宮くんは、あの、呂布さんがす・・・
陳宮:え?
張遼:・・・ううん、何でもない 忘れて
陳宮:はあ・・・解りました・・・?
(張遼、陳宮に向き直って陳宮を見つめる)
張遼:ね 陳宮くん、聞いて
陳宮:なんです?
(張遼は緊張した面持ち)
張遼:あなたも私と同じように仕えてみない?
陳宮:は?
張遼:あなたほどの知力なら悪いようにはしないわ 私も口添えしてあげる どうかしら
(陳宮、苦笑する)
陳宮:そんな、買い被り過ぎですよ
(張遼、真剣な目つき)
張遼:私、董卓の・・・いえ董卓様の家来として言ってるんだけど
(陳宮、張遼の目を真っ直ぐ見返す)
陳宮:どうやら真面目なお話のようですね
張遼:ええ
(陳宮、笑顔で答える)
陳宮:お断りさせて頂きます
張遼:そう・・・やっぱりね
(張遼、嬉しそうに小さく笑う)
張遼:フフッ・・・よかった
陳宮:え?
張遼:さっきのは私の本心じゃないの あれはあなたを説得するように指令が
あったから言っただけ 一応私、任務は確実にこなすようにしてるから
陳宮:そんな事を僕に喋っていいんですか?
張遼:うーん、そうね、ちょっとヤバイかも でも陳宮くん、口が堅そうだし
陳宮:あの、張遼さん
張遼:何?
陳宮:張遼さんは、その、こう言ってはなんですが、意外と義理堅いんですね
張遼:そうかしら? でも自分ではあんまりそうは思ってないけど
(張遼、リラックスしたように喋る)
張遼:それにしても、ちょっと残念だったかな もし最初から陳宮くんが私と
同じ陣営だったら今頃 ・・・
陳宮:今頃は?
張遼:そうね・・・ナイショよっ フフフッ
張遼:え?
(張遼に突如異変が現れる)
張遼:なに、この感じ?
陳宮:どうかしましたか
(よろめく張遼)
(張遼、手にしていた矛を落としてしまう)
張遼:あ・・・矛が・・・
(張遼、落とした矛に手を伸ばそうとして、その場にへたり込む)
張遼:あ れ?
(張遼、立ち上がろうとして、そのまま倒れてしまう)
(陳宮、椅子から立ち上がって張遼の脇へ寄る)
陳宮:張遼さん!?
(張遼、口を開くが小さい声)
張遼:・に・・が・・・らなく・・・
陳宮:なんですって? もう一度お願いします
(陳宮、頭を張遼の口元に近づけ耳を澄ませる)
張遼:急に・・力が・・入らなく・・なった・・・
(陳宮、張遼の匂いに気付く)
陳宮:(ん? これは・・・あの香の匂い?)
(陳宮、張遼を抱き起こす)
陳宮:(しかし張遼さんの知力ならこの程度は平気な筈ですが)
(陳宮、張遼の頭を抱きかかえて問い掛ける)
陳宮:張遼さん、煙とかガスのようなものを嗅いだ覚えはありますか?
(張遼、弱々しく答える)
張遼:さっき・・・李儒に・・・『強化したから・・・安全確認の・・・実験』って
(張遼、一旦息継ぎ)
張遼:・・・煙、みたいな もの を 私に
陳宮:そういう事ですか 大体解りました
陳宮:(李儒は香に何か手を加えたようですね だから張遼さんも・・・)
陳宮:(でも一体何の為に・・・?)
(陳宮の顔が強張る)
陳宮:(まさか、呂布さんを狙っている!?)
陳宮:しまった! これはまずいです!
(張遼、潤んだ瞳で陳宮を見る)
張遼:私、何かヘン・・・
(陳宮、軽く張遼の頬を叩く)
陳宮:しっかりして下さい!
(陳宮、張遼の様子を見る)
(張遼、息遣いが荒い)
陳宮:(脱出するなら今しかありませんが・・・)
(外が騒がしくなる)
(金属音や董卓の家来達の悲鳴が聞こえる)
陳宮:(クッ 始まったようですね)
陳宮:張遼さん、しばらくじっとしてれば収まります
張遼:・・・あ
陳宮:すいません、僕は 僕は行きます・・・
(張遼、手を伸ばして陳宮の袖を掴む)
(ぎゅっ・・・)
陳宮:張遼さん?
張遼:・・・
(張遼、何とか身を起こそうとする)
陳宮:余り無理をしないほうがいいですよ
(張遼、陳宮に抱きついてくる)
陳宮:あっ!?
(陳宮、バランスを崩しあお向けに倒れる)
(その上に張遼が覆い被さる)
(陳宮の胸に顔を埋める張遼)
張遼:陳、宮く ん
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シーン7 建設予定地跡(呂布のいる場所)
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(董卓の家来と打ち合う呂布)
(呂布、バタバタと董卓の家来達を戟で吹き飛ばす)
呂布:これで、おしまいっ!
(吹き飛ばされた李粛、恆・李儒の立つ場所の横まで飛ばされる)
李粛:うわぁっ!
(しかし董卓はその様子に見向きもしない)
恆:ふふふ やはりこれだけの兵で呂布を押さえるのは無理だったか
(恆は不敵な笑みを浮かべる)
董卓:李儒! 李儒はいずこに!
李儒:はっ ただいま!
(董卓の脇に走り寄ってくる李儒)
李儒:殿、ご報告申し上げます
董卓:なんだ
李儒:は、邪魔者を捕らえましてございます
董卓:ほう?
李儒:今は張遼が監視してございます
董卓:ふむ
(呂布、董卓と李儒の会話を聞いて驚く)
呂布:じゃまもの? わたしと赤兎ちゃんのほかにだれかいるの!? それに
なんで張遼さんが!?
(董卓、李儒の方を振り返る)
董卓:そろそろ仕掛けるぞ?
李儒:はっ 風向きも問題ありません
董卓:よし やれ
李儒:はっ
(李儒は懐から丸い玉を取り出し、呂布の方へ投げつける)
(呂布、恆の家来を全て打ち据え、呂布の周りに立っている者は誰もいない)
(そこへ李儒の投げた玉が飛んでくる)
呂布:はっ!?
(呂布、咄嗟に戟で玉を斬る)
(『パン!』と風船が割れるような音)
(その途端、玉は破裂し煙が辺りを覆う)
呂布:けむり!?
赤兎:気をつけて、ほーちゃん! 煙幕よ!
(呂布は煙の中、恆に向かって叫ぶ)
呂布:あなたのなかまはぜんぶやっつけたわ! いまさらそんなものでどうするき!?
(董卓はニヤリと笑う)
董卓:すぐに判る
(煙はすぐに晴れていく)
呂布:なにこれ? えんまくのいみがな・・・
(呂布、煙の匂いに気づく)
呂布:(なに? このにおい まえにもあった、よう な・・・)
(呂布の意識が急に遠のいて来る)
呂布:(いけない・・・これってまえに・・赤兎ちゃんがいってた・・・)
(煙の残滓が赤兎のところまで流れてくる。煙の匂いに気付く赤兎)
赤兎:この匂い、どこかで嗅いだような?
これは・・・しまった! ほーちゃん! あの香よ!
呂布:え ええっ!?
(呂布、慌てて戟を持っていない方の手で鼻と口を塞ぐ)
呂布:う うう・・・
(呂布、片手で戟を構える)
(董卓、驚く)
董卓:なんと! 片手で戟を持てるとは! だがいつまで続くかな?
(よろける呂布。戟を杖代わりにして何とか立とうとする)
呂布:(だ だめ・・・このままじゃ・・・)
(呂布、地面に膝をつく)
董卓:ふっふっふっ どうやら効いてきたようだな
(董卓、呂布にゆっくりと近づいていく)
(呂布、膝をついたまま身動きできない)
(呂布は顔を上げて董卓の方を見ようとする)
呂布:く・・・ひ、ひきょうよ・・・
(董卓、呂布に接近しながら言い返す)
董卓:好きなように言うがいい はっはっはっ!
呂布:くっ!
(呂布はヨタヨタと戟を支えに立ち上がろうとする)
呂布:(だめ・・・あたまが ぼんやりして き た・・・)
(呂布、遂に前のめりに倒れ込む)
董卓:おっと、危ない危ない
(董卓、倒れる呂布を抱きとめる)
(董卓、呂布の横顔を覗き込む)
董卓:ふふふ 手間を取らせおって
(董卓、呂布がまだ戟を握っている事に気付く)
董卓:・・・ほう、まだ戟を放さぬとは
(董卓、下卑た笑いを浮かべる)
董卓:さて、どう愛でて進ぜようかの?
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シーン8 建設予定地跡(陳宮のいる場所)
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(陳宮に覆い被さっている張遼)
(張遼は陳宮にしがみ付いたまま動かない)
陳宮:だ、大丈夫ですか?
(陳宮、起き上がろうと半身を上げる)
陳宮:よいしょ・・・っと
(すると張遼が離すまいと弱々しく腕に力を入れる)
張遼:や・・・いっちゃ や だ・・・
陳宮:・・・すみません、僕は董卓をあのままにはしておけません
(張遼、弱々しく首を振る)
張遼:ち、がう の・・・董 卓なん、て どう でもいい・・・
陳宮:え? 何ですって?
張遼:わた し・・・
(外から『パン!』という音が響いてくる)
(陳宮、音に気付いてハッとする)
陳宮:しまった!
(陳宮、張遼が抱きついたまま強引に立ち上がる)
(その拍子に陳宮のポケットからハンカチが滑り落ちる)
(陳宮はその事に気付いていない)
張遼:あ・・・
(陳宮、慎重に張遼の腕を外す)
陳宮:すいません、ここに座っていて下さい
(陳宮、張遼をパイプ椅子に座らせプレハブ小屋の窓際へ駆け寄る)
張遼:あ う・・・
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シーン9 建設予定地跡(呂布のいる場所)
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(グッタリとした呂布を抱きかかえている董卓)
(呂布はまだ辛うじて自分の意識が残っている)
(勝ち誇った顔の董卓)
董卓:ほれ、素直にせい
呂布:く・・・ま けない もん
(呂布、手から力が抜け戟を落としてしまう)
呂布:あ・・・しまっ・・・
(呂布、ガクリと気を失う)
董卓:ふっふっふ そろそろ良い頃合いかもしれん
(一滴の水が空から降って来て、地面に落ちる)
董卓:ん?
(空を見上げる董卓)
(いつの間にか上空は一面の雲で灰色一色になっている)
(またポツリ、ポツリと断続的に雨が降ってくる)
(董卓、何故か急に顔が青ざめる)
李儒:む?
(手を差し出す李儒)
(李儒の掌に雫が一滴落ちる)
李儒:殿、これは・・・
董卓:いかん! 引き揚げっ! 引き揚げだっ!
(董卓、やけに狼狽している)
李儒:引き揚げでございますか?
董卓:そうだ 二度も言わすな 急げ!
(董卓がそう言っている間にも少しずつ雨足が強くなって来る)
董卓:早くせい!
李儒:は、ははーっ ところで殿、呂布は如何致しますか?
(李儒は董卓が抱きかかえている呂布に一瞥する)
李儒:呂布を連れて行くと脚が遅くなりますぞ?
(董卓は悔しそうに言う)
董卓:う、うむー・・・やむを得ん 捨て置く!
李儒:はっ! 引き揚げ! 皆の者、引き揚げーっ!
(董卓、言うや否や踵を返して去って行く)
(他の董卓の家来も波が引くようにいなくなってしまう)
(雨足が少しずつ強くなって行く)
(身動きできないまま鼻だけ鳴らす赤兎)
赤兎:あ・・・匂いが薄くなってきた そっか、雨のせいね
(呂布の顔を雨が打つ)
呂布:あ う・・・う、うん
(呂布の意識が徐々に戻る)
呂布:(このかんじ・・・まえにも、あった?)
呂布:(なんだろう なにか、おもいだせそう)
(呂布の意識に声が響く)
声:『呂布さん、助けに来ました! だいじょ・・・あっ!』
呂布:(だれだろう?・・・そうだ、わたしのしってるひと)
声:『どうやらかなり吸い込んでしまったようですね』
呂布:(うん へんなにおいがして、それでわたしきがとおくなって・・・)
声:『すすすすいません! 呂布さん、直接取り出します!』
呂布:(ああ、このひと、わたしをたすけてくれたんだっけ)
声:『取れました! 取れましたよ、呂布さん!』
呂布:(ありがとう、・・クン)
(呂布の顔を雨が打つ)
呂布:(あれ? わたし、いったいどうしたんだっけ)
(呂布、ハッと目を覚まし、数回まばたき)
呂布:(そっか わたし、へんけむりにまかれて、それできがとおくなったんだ)
(呂布、落とした戟を拾い直し、ヨロヨロと立ちあがる)
呂布:(あたまなかが、かきまわされているみたい・・・)
呂布:(そうだ 赤兎ちゃんをたすけなきゃ)
(呂布、戟を杖にして赤兎の方へゆっくりと歩き始める)
呂布:よいしょっ・・・と
(呂布、時折ふらつきつつ赤兎に向かって歩いていく)
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シーン9 建設予定地跡(陳宮のいる場所)
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(陳宮、プレハブ小屋の窓からそっと外の様子を見る)
(董卓が慌てて立ち去って行く様子が見える)
陳宮:あっ 董卓が逃げていく? 呂布さんは?
(その後に続いて呂布がヨロヨロと立ち上がり、赤兎の方へ歩いていく)
陳宮:良かった 無事なようですね
(陳宮、ほっと一息つく)
陳宮:(雨が降って良かった・・・今回は僕の出番は必要なかったようですね)
(陳宮、張遼に呼びかける)
陳宮:張遼さん、終ったようですよ?
(張遼は陳宮の座っていたパイプ椅子にもたれる様に座っている)
(張遼、無言で陳宮を見ている)
張遼:・・・
(張遼は息遣いが荒く、熱っぽい視線で陳宮を見ている)
(陳宮、座っている張遼を見る)
陳宮:(どうやら香が効いてしまっているみたいです)
陳宮:(このまま放って置く訳にもいきませんね)
陳宮:(張遼さんも一旦外に連れ出しましょう・・・)
(陳宮、張遼の側に近づき背を向けて、しゃがみ込む)
陳宮:さあ乗って下さい ここから出ましょう
張遼:はい・・・
(素直に従う張遼)
(陳宮は張遼を背負って立ち上がる)
陳宮:では、行きますよ 大丈夫ですか?
張遼:はい・・・
陳宮:(まるで呂布さんの時と同じですね)
(陳宮、プレハブ小屋の出口に近づき辺りを警戒)
(陳宮、張遼を背負ってプレハブ小屋から出て行く)
(張遼を背負い、雨の中を歩きながら考える陳宮)
陳宮:それにしても、何故董卓は逃げ出したのですかね?
張遼:・・・
陳宮:(雨が降って香の効き目がなくなる事を恐れたのでしょうか それても
何か別の理由があったとか・・・?)
(張遼は陳宮の背中でおとなしくしている)
(張遼、満足したような微笑を浮かべている)
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シーン10 建設予定地跡(呂布のいる場所)
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(呂布と赤兎、プレハブ小屋に向かっている。小声で会話)
赤兎:ほーちゃん、あそこに何があるの?
呂布:赤兎ちゃんのなわをほどいているときに、たしかにみえたの けはいも
かんじた
赤兎:あの小屋の中に?
(呂布、力強く頷く)
呂布:うん だれかいたよ まちがいなく
赤兎:そう言えばさっき李儒もこの小屋の方へ行ってたわね 今はどう?
(呂布、首を横に振って答える)
呂布:だめ よくわかんなくなっちゃった あのけむりのせいで、まだかんか
くがぜんぶはもどってないの
赤兎:大丈夫?
呂布:うん それいがいはだいじょうぶ
(プレハブ小屋に到着する呂布と赤兎。小屋の入り口脇で身構える)
呂布:赤兎ちゃん、はいるよ? いい?
(頷く赤兎)
赤兎:いいわ
呂布:それっ!
(中に飛び込む呂布と赤兎)
呂布:あれ? だれもいない
(小屋の中にはパイプ椅子などがあるだけで誰もいない)
(呂布と赤兎、中をキョロキョロと見回す)
赤兎:どうも一足遅かったようね
呂布:そうね・・・
赤兎:ん・・・
(鼻を鳴らす赤兎)
赤兎:あの香とよく似た匂いがわずかに残っている?
呂布:あれ?
(呂布、パイプ椅子付近に布状の物が落ちている事に気付く)
赤兎:どうかした?
呂布:あ、うん なにかおちてるみたい
(呂布、パイプ椅子に近づく)
呂布:なにかな、これ
(呂布、床に落ちている布を拾い、手にとって見る)
(よく見ると布は陳宮のハンカチ)
(呂布、非常に驚く)
呂布:あっ! これってはんかち!?
赤兎:あら、どっかで見たような・・・
(呂布、ショックでよろめく)
呂布:そ そんな、なんでこんなところに!?
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第10話終了
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